【話題】放課後等デイサービスは「ずるい」？｜結論：誤解です

「放デイってずるい？」
ネットやSNSで、そんな声を見かけませんか？
放課後等デイサービス（放デイ）は、障害のある子どものための、放課後や休日の安心できる場所です。
でも、こんな声も聞きます。
「働いていない親でも使えるのは、不公平じゃない？」
「税金のムダづかいでは？」
学童は働く親向け、放デイは働いてなくても使える。
その違いに疑問を持つ人がいるみたいです。
でも、本当に「ずるい」んでしょうか？

このブログ記事では、「放デイがなぜ必要なのか」「なぜ批判されるのか」について解説します。
ぜひ最後までご覧ください！

放課後等デイサービスは「ずるい」？【結論：誤解です】

放課後等デイサービス（放デイ）に対する「ずるい」という批判。
その背景には制度への誤解や不公平感があります。
「専業主婦でも利用できるのは不公平」「税金が使われているのに負担が少ない」といった声が多く、学童保育との比較で疑問を持つ人がいるのも事実です。

また、障害児への特別な支援が「優遇」と捉えられ、不満を抱くケースもあります。

しかし、これらの批判の多くは、制度の目的や利用条件が正しく理解されていないことが原因です。

「専業主婦でも利用できるのは不公平？」という意見

「学童は共働き家庭のためのものなのに、放デイは専業主婦でも使えるのは不公平では？」という声があります。
確かに、学童は働く親のための制度ですが、放デイは「療育」や「発達支援」が目的であり、単なる預かりサービスではありません。

たとえば、発達障害のある子どもは、集団生活で適応するためのスキルを学ぶ機会が必要です。
自宅で親が教えるには限界があり、専門的な支援が求められます。
そのため、親の就労状況にかかわらず利用できる仕組みになっているんです。

また、親が専業主婦（主夫）だからといって、育児の負担が軽いわけではありません。
障害児の育児は、学校や家庭のフォローが不可欠であり、親のレスパイト（休息）も必要です。

むしろ、家庭だけで育児を抱え込むことでストレスが増し、虐待リスクが高まるという指摘もあります。

「税金の無駄遣いでは？」という誤解

「放デイは税金で運営されているのに、利用者の自己負担が少なくてずるい」という意見もあります。
しかし、福祉サービスは社会全体で支え合う仕組みであり、障害児支援も例外ではありません。

まず、放デイの運営費用は、国や自治体が負担し、利用者の負担は世帯所得に応じて決まります。
高所得世帯は上限額が設定され、低所得世帯は無料になる場合も。
これは、障害児の育児には通常よりも多くの負担がかかるため、経済的なハードルを下げる目的があります。

また、放デイがなければ、親が仕事を辞めたり、十分な支援を受けられずに子どもが社会から孤立したりする可能性があります。
結果的に、生活保護受給世帯が増えるなど、社会全体の負担が増えることに。

たとえば、アメリカでは障害児の支援サービスが不足しており、親が育児と仕事を両立できずに貧困に陥るケースが報告されています。
＊参考：Families with Disabilities Face Multiple Challenges Accessing Child Care

一方、日本では放デイを活用することで、親が働き続けられる環境が整っています。

つまり、短期的には税金の支出が発生しても、長期的には社会全体の負担軽減につながるんです。

なぜ放課後等デイサービスが必要とされるのか？

放デイは、単に「親が楽をするための制度」ではなく、障害児が社会で自立して生きていくための重要な支援です。

その必要性は、大きく分けて①子どもの発達支援、②家庭の負担軽減、③社会全体の負担減少の3つの観点から説明できます。

① 子どもの発達支援

発達障害や知的障害を持つ子どもは、日常生活のスキルやコミュニケーション能力を伸ばすために、特別な支援が必要です。

たとえば、療育プログラムでは、着替えや食事の練習、感情のコントロール方法などをスタッフが指導し、将来的な自立を目指します。

② 家庭の負担軽減

障害児の育児は、健常児と比べて何倍ものエネルギーが必要です。

たとえば、自閉症スペクトラムの子どもは予測できない行動をとることが多く、親が常に注意を払う必要が。
放デイを利用することで、親がリフレッシュでき、結果的に家庭内のストレス軽減にもつながります。

③ 社会全体の負担減少

放デイの支援によって、障害児が将来的に就職できる可能性が高まり、社会福祉費の削減につながります。

逆に、適切な支援を受けられなかった場合、大人になっても就労が難しくなり、生活保護に頼らざるを得なくなるケースが多くなります。

放デイは単なる「預かり場所」ではなく、障害児の未来を支える重要な役割を担っています。

決して「ずるい」というわけではないんです。

放課後等デイサービスとは？【目的と役割】

そもそも放課後等デイサービス（放デイ）とは、障害のある子どもが放課後や休日に通える福祉サービスの一つです。
支援が必要な児童に対し、生活訓練や学習支援、レクリエーション活動を提供し、家庭と学校以外の環境で社会性を育む役割を担います。

放課後等デイサービスの基本概要

放デイでは、学習支援、生活習慣の訓練、レクリエーション活動などを通じて、子どもの成長をサポートします。
利用対象は、発達障害・知的障害・身体障害のある児童で、受給者証が必要です。

親の負担軽減も大きな目的の一つです。
たとえば、共働き家庭では放課後の預かり先が必要になり、専業主婦の家庭でも育児負担の軽減や兄弟姉妹へのケア時間確保のために活用されています。
実際に、支援がなければ家庭だけで障害児のケアをするのは困難です。

前述したように、こうした支援が「ずるい」と言われるわけですが……
その背景には「専業主婦でも利用できるのは不公平」「税金が無駄に使われている」などの誤解があるんです。

なお、受給者証については、以下の記事で詳しく紹介しています。

放課後等デイサービスと学童保育の違い

放デイと学童保育は混同されがちですが、大きな違いがあります。

放課後等デイサービスはどんな子どもが利用できるの？

放デイを利用できるのは、原則として以下のような子どもたちです。

利用できる子どもは限定されており、誰でも自由に通えるわけではありません。
しかし、外から見ると「障害児だけが優遇されている」と映るため、不公平感を抱く人がいるんです。

こうした誤解が「ずるい」と言われる原因の一つになっています。

【体験談】放課後等デイサービスの利用者の声

放デイを利用している家庭の声を聞くと、「ずるい」という批判とは異なる現実が見えてきます。
利用者の多くは、「助かる部分もあるが、決して楽ではない」と感じているんです。
実際に放デイを利用している、私たち夫婦もそう感じています。

たとえば、
「送迎の負担が減るのはありがたいが、支援の質には差がある」
「子どもが通いたがらず、無理に連れて行くのが大変」
など、利用すること自体が簡単ではないケースもあります。

実際に利用している私の娘の実例や、他の家庭のリアルな声を見ていきましょう。

【実体験】障害児を育てる親の1日「放デイを利用すると本当にラク？」

「放デイを利用すれば、親は楽になる」というイメージを持たれがちですが、実際に障害児を育てる親の1日を見てみると、その大変さがわかります。

たとえば、自閉症スペクトラムの子どもを育てる家庭では、以下のような1日を送っています。

ある障害児の親の1日

• 6:00　起床・朝の支度（場合によっては深夜に目覚めるので寝不足）
• 7:00　朝食・着替えなど（着替えや排せつなどは介助が必要）
• 7:30　学校へ送り出し（事前に学校への連絡事項が多く、連携が欠かせない）
• 8:30　家事・育児（たまった家事と、妹たちの世話）
• 10:30　買い出し
• 13:00　書類・提出物の確認（学校・放デイ・役所系の書類が多い）
• 15:00　放デイへ送迎（施設によっては親の送迎が必要）
• 18:00　迎え・夕食準備（子どもの好き嫌いが激しく、食事に工夫が必要）
• 20:00　宿題・お風呂（学校の宿題はすべて介助が必要）
• 21:00　寝かしつけ（なかなか寝付けないこともある）
• 22:00　家事・明日の準備（日中にできなかった家事、明日の学校と放デイの準備）
• 25:00　就寝

ちなみに、上記は我が家の例です。

放デイを利用していても、障害児の育児はとても大変。
決して「楽をしている」とは言えません。

むしろ、支援を活用することで、ようやく家庭と仕事のバランスを取っているのが現実です。

利用者の体験談「助かるけど、大変なこともある」

放デイは多くの家庭にとって必要不可欠な支援ですが、「思っていたより大変だった」という声もあります。

たとえば、「デイサービスを利用しても、子どもが行きたがらず、毎朝の説得が大変」というケース。
特に発達障害の子どもは環境の変化に敏感で、新しい場所に馴染むのに時間がかかることが多いんです。
「通い始めるまでの準備が想像以上に大変で、親も根気が必要」といった意見もあります。

また、放デイの運営状況にもばらつきがあり、
「支援員の人数が足りず、十分なサポートを受けられないこともある」
「期待していた支援プログラムが実施されない日もある」
といった課題も指摘されています。

一方で、
「預ける時間ができたことで、親の負担が減った」
「同じ境遇の親とつながりができて、情報交換がしやすくなった」
といったポジティブな声もあります。

つまり、放デイは一概に「ずるい」と批判されるような特権的な制度ではありません。

利用者も試行錯誤しながら活用している支援なんです。

＊参考：
知的なしASD、小二男児のデイサービス行きしぶり
【相談】通わせている放課後等デイサービスの対応がひどい

支援の実態：「楽をしている」と思われる理由と現実

放デイを利用している家庭に対し、「親が楽をするための制度では？」という批判が出ることがあります。
しかし、実際には利用することで生じる負担もあります。

まず、送迎の負担です。
デイサービスは送迎付きの施設もありますが、地域によっては親が毎回送迎をしなければならない場合もあります。
また、放課後の短い時間に子どもを預けるため、仕事をしている親はスケジュール調整が大変になることもあります。

利用者の自己負担も少なくありません。
たとえば、特別な活動やプログラムを受ける場合は追加料金がかかることがあり、「思っていたよりも費用がかさむ」と感じる家庭もあります。

さらに、デイサービスの空き状況によっては希望通りの施設に通えないこともあるため、「選択肢が限られる」というデメリットもあります。

放デイを利用している家庭は、決して「楽をしている」わけではありません。
「ずるい」という批判は、実際の利用者の状況を知らないがゆえの誤解から生じていることが多いんです。

「ずるい」のではなく、支援があることで子どもが適切な療育を受け、家庭内の負担が少しでも軽減される。
これこそが、放課後等デイサービスの本来の役割なんです。

＊参考：放デイの利用についてご意見をお聞かせください

放課後等デイサービスの仕組みを、もう少し詳しく

放デイは「ずるい」「公平ではない」との声がある理由について。
「学童との違い」「税金の使い道」「利用者の負担」などを挙げました。

ここでは、放デイについてもう少し具体的に紹介し、どのような仕組みで運営されているのかを解説します。

放課後等デイサービスの仕組み「なぜこの制度があるのか？」

放デイは、単なる「預かり保育」ではなく、障害児が社会で生きていくためのスキルを学ぶ場でもあります。
その背景には、日本の障害児支援制度の考え方があるんです。

この制度が存在する理由として、以下の点が挙げられます。

1. 障害児の自立支援
   放デイでは、日常生活訓練や社会性の向上を目的としたプログラムが組まれています。
   たとえば、身の回りのことを自分でできるようになるための訓練や、他者との適切なコミュニケーション方法を学ぶ場が提供されています。
2. 家庭の負担軽減
   障害児の育児は、健常児よりも多くの手間と時間がかかります。
   親が息抜きをする時間を持つことは、長期的に安定した育児を続ける上で非常に重要です。
   そのため、レスパイト（休息）支援としての側面もあります。
3. 社会全体の負担軽減
   早期に適切な支援を受けた子どもは、将来的に就労や自立できる可能性が高まります。
   結果として、福祉に依存しない社会の形成につながるため、短期的には税金の支出が発生しても、長期的には社会全体の負担を減らす効果が期待されています。

放デイは単に「楽をするための制度」ではなく、障害児とその家族、さらには社会全体の利益を考えて設計されたものなんです。

税金の使い道：「ずるい」と感じる前に知っておきたいこと

放デイの運営には税金が使われています。
この点に対して、「なぜ障害児だけ特別な支援を受けられるのか？」と疑問を持つ人がいるのも事実です。
しかし、福祉制度の目的は「公平」ではなく、「必要な人に適切な支援を提供すること」です。

たとえば高齢者の介護保険や生活保護制度も、すべての人が使えるわけではなく、必要な人に提供されています。
放デイもそれと同じで、「障害児が社会で生きていくために必要な支援」として設けられています。

なお、以下の表は福祉分野における税金の主な使い道を示したものです。

このように、放デイは決して特別に多くの税金を使っているわけではなく、社会の様々な支援制度の一部に過ぎません。

さらに、放課後等デイサービスを利用することで、将来的に障害児が自立し、生活保護などの負担を減らすことにつながります。

一見「ずるい」と感じられるかもしれませんが、長期的に見れば社会全体にとってもメリットがある制度なんです。

放課後等デイサービスをめぐる今後の課題

放デイは多くの家庭にとって不可欠な支援ですが、今後の運営においていくつかの課題が指摘されています。
特に、利用者の増加による施設の負担増、サービスの質の維持、税金の適正な使い道などが重要なテーマです。

また、施設ごとの支援のばらつきや、保護者との連携不足といった問題もあり、より公平で質の高い支援を提供するための改善が求められています。
ここでは、今後の課題について詳しく掘り下げていきます。

利用者増加による負担増の問題

放課後等デイサービスの利用者は年々増加しており、施設のキャパを超えるケースが増えています。
厚生労働省の調査によると、2010年には全国で約10万人だった利用者が、2020年には約30万人に増加しました。この急増により、一部の施設では入所できない、職員の負担が増すといった問題が発生しています。

また、施設の数が不足している地域では、希望するサービスを受けられない家庭もあります。
特に地方では施設自体が少なく、長距離の送迎が必要になる場合も。

結果として、都市部と地方でのサービス格差が生まれてしまいます。

さらに、利用者が増えたことで、支援の質が低下する懸念もあります。
たとえば、職員一人あたりの対応人数が増え、十分な個別支援ができないケースも報告されています。

これにより、「せっかく利用しても期待していた支援が受けられない」と感じる保護者も少なくありません。

こうした課題を解決するためには、新たな施設の開設や職員の確保が急務です。
さらに、利用者が集中する地域では、デイサービスの定員増や、学校と連携した支援体制の整備も必要となるでしょう。

サービスの質と公平性をどう両立するか

放デイの利用者が増える中で、サービスの質をどのように維持し、公平な支援を提供するかが大きな課題となっています。

現在、放デイは民間事業者が運営しており、施設ごとに支援の内容や質にばらつきがあります。
ある施設では専門の療育スタッフが充実している一方で、別の施設では人手不足により最低限の支援しか提供できないこともあります。

この違いが、「同じ制度を利用しているのに受けられる支援に差がある」という不公平感を生んでいます。

また、放デイは事業所の利益によって成り立っているため、一部では利用者数を増やすことを優先し、適切な支援が行われていないケースも。

不適切な支援が行われれば、支援を本当に必要としている子どもたちに十分なケアが届かなくなってしまいます。

公平性を保ちつつ質の高い支援を実現するためには、以下のような対策が必要です。

• 第三者機関による評価制度の導入
  施設ごとの支援の質をチェックし、一定の基準を満たした施設のみが運営できる仕組みをつくる。
• 職員の研修制度の充実
  支援員のスキルを向上させることで、施設ごとの支援の質の差を減らす。
• 自治体と連携したモニタリング
  定期的に支援の内容を見直し、利用者の声を反映する仕組みをつくる。

放デイは、支援を必要とするすべての家庭にとって重要な制度です。
質の維持と公平性の確保を両立させることが、今後の大きな課題と言えるでしょう。

海外の福祉制度との比較：日本の立ち位置は？

日本の放デイは、海外の福祉制度と比べてどのような特徴があるでしょうか？
各国の障害児支援制度と比較すると、日本の制度の強みや課題が見えてきます。

支援内容の特徴

• 日本
  生活スキルと学習支援（食事や金銭管理の訓練、宿題サポートなど）、心理的支援と社会性育成（カウンセリングやグループ活動）を重視。
  医療的ケア児の受け入れ施設が少ない。
• 北欧
  医療的ケアを日常環境で提供。
  リハビリは生活の場で行われる。
• アメリカ
  STEAM教育やアートセラピーを活用し、創造性や問題解決能力を育成。
  IEP（個別教育プログラム）で法的に支援内容を保証。
• イギリス
  自然体験やチームワークを重視したプログラムで、自立心や創造性を育む。

専門性と質

• 日本
  事業所数は増加したが、専門性のばらつきや基準の曖昧さが課題。
  法改正で「不適切な事業所の淘汰」を推進し、専門職員の育成が急務。
• 北欧
  公的資金で専門職を確保し、セラピストや教育者が日常的に支援に携わる。
• ドイツ
  社会保険制度を基盤に、労使共同負担で質の高いケアを維持。

日本の放デイは、障害児の自立支援に特化した制度ですが、「専門性のばらつき」や「プログラムの多様性不足」が課題です。

今後の法改正などで、質の向上や多様性へ対応してくれることに期待したいです。

まとめ【放課後等デイサービスが「ずるい」は誤解】

今回のブログ記事では、放課後等デイサービスが「ずるい」と言われる背景や、実際の利用者の声、制度の公平性、今後の課題について解説しました。

記事のポイント

• 放課後等デイサービスは障害児の成長を支援するための制度であり、単なる「預かり」ではない。
• 「専業主婦でも利用できるのは不公平」という声があるが、支援の目的が異なるため、学童保育とは役割が違う。
• 利用者が増加する中で、施設のキャパや支援の質に課題が生じている。
• 海外と比較すると、日本の放デイはサービスの質のばらつきなどが課題となっている。

「ずるい」という誤解をなくすために

放デイは、障害児が将来自立し、社会に適応するための重要な支援です。
しかし、その役割や仕組みが十分に理解されていないため、「ずるい」と誤解されることがあります。

この問題を解決するには、制度の透明性を高めることが必要です。
サービスの内容を広く周知し、利用者と非利用者の間で認識のギャップを埋めることが重要です。
また、行政の適切な監督のもと、支援の質を向上させる取り組みも求められます。

放デイは一部の人だけが「得をする」ものではなく、社会全体で支え合うための制度。
より良い支援を提供するためには、制度の理解を深め、国が課題解決に向けた議論を続けていくことが大切でしょう。

今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。