
「出生前診断を受けなかったら、あとで後悔するのかな……」
妊娠中、ふとそう考えて検索された方が多いのではないでしょうか。
結論からお伝えします。出生前診断を受けなかったからといって、必ず後悔するわけではありません。逆に、受けたからといって必ず安心できるわけでもありません。
実際に、日本医学会の出生前検査認証制度等運営委員会が公開している妊婦さんや出産を経験した方の声を読むと、「検査をしなくて本当によかった」と語る方も、「受けなかったら不安で押しつぶされそうだった」と語る方も、どちらもいます¹。
大切なのは、出生前診断やNIPTで「何がわかり、何がわからないのか」を理解したうえで、夫婦で納得して決めることです。
私たち夫婦には、重度知的障害を伴う自閉症の長女、健常児の二女・三女がいます。長女の障害児育児を経験していたからこそ、三女の妊娠時にはNIPTを受けるかどうかを本気で悩みました。
この記事では、私たちの体験と、公的調査で集められた様々な声を踏まえて、「受けなかった後悔」と「受けた後悔」の両方を当事者の立場から整理します。
「受けるべき」「受けないほうがいい」と押し付けるつもりは一切ありません。あなたとパートナーが、後悔の少ない判断にたどり着くための材料になれば嬉しいです。

- 出生前診断を受ける・受けないことで起こりうる後悔
- NIPTで調べられることと、調べられないこと
- 障害児育児を経験した私たち夫婦がNIPTを受けた理由
- 夫婦で納得して判断するために話し合うべきこと
- NIPTクリニックを選ぶときに確認したいポイント
※本記事は、重度知的障害を伴う自閉症の長女を育てる筆者夫婦が、三女の妊娠時にNIPT(新型出生前診断)を受けた経験をもとに書いた個人の体験記録です。医学的助言や診断を目的としたものではありません。
※NIPTは確定診断ではなく、対象となる染色体疾患の可能性を調べる非確定的検査です。陽性の場合は、羊水検査や絨毛検査などの確定的検査で確認する必要があります。
※出生前診断を受けるかどうか、判断に迷う場合は、かかりつけの産婦人科医、遺伝カウンセラー、臨床遺伝専門医など、専門家への相談を活用してご判断ください。
※検査制度に関する記述は、こども家庭庁「妊娠中の検査に関する情報サイト」、日本医学会出生前検査認証制度等運営委員会、厚生労働科学研究などの公開情報を参照しています(出典は記事末尾)。
費用、検査可能週、結果通知までの日数、サポート体制など、主要なNIPTクリニックの違いを別記事で整理しています。
目次
【結論】後悔するかどうかは「受ける・受けない」より、納得して決めたかで変わる

最初に、この記事全体の結論をお伝えします。
出生前診断を受けるかどうかで、後悔するかどうかは決まりません。
「夫婦で十分に話し合い、情報を集めたうえで、自分たちで決めたかどうか」で、後悔の度合いが変わります。
これは、私たち夫婦自身の経験と、後述する公的調査の妊婦さんや出産を経験した方の声を読み比べて、強く感じていることです。
受けて陽性が出てショックを受けた方も、受けずに出産後に疾患がわかって戸惑った方も、共通するのは「もっと話し合っておけばよかった」「もっと知っておけばよかった」という言葉です。
つまり、後悔の正体は「選択そのもの」ではなく「準備不足」です。
出生前診断を受けなかった人が後悔しやすい5つの場面【公的調査の声から】

日本医学会の出生前検査認証制度等運営委員会が公開している、令和3年度厚生労働科学研究と河合蘭・ベビカム共同調査をもとにした妊婦さんの実際の声¹に基づいて整理しました。
これらに自分が当てはまるかどうか、考える材料にしてみてください。
ケース1:情報不足のまま「なんとなく」決めてしまった
最も多いのが、よく知らないまま、なんとなく受けなかったというケースです。
公的調査の声からも、「妊娠初期はつわりや体調変化で精一杯で、出生前診断について調べる余裕がなかった」という趣旨の声が見られます。
「みんな受けてないみたいだから」「お金がかかるから」「夫が反対しなかったから」など、明確な理由ではなく、調べる時間もないまま妊娠期間が過ぎていく。
このパターンの後悔は、判断結果の後悔ではなく「判断プロセスの後悔」です。
検査を受けなかったこと自体ではなく、ちゃんと考えなかったことを悔やむんです。
ケース2:出産後に疾患や障害がわかったとき
公的調査では、妊婦健診の超音波検査でダウン症の可能性を指摘されてから羊水検査に進んだ方の声などが収録されています¹。
出生後に何かがわかったとき、「もっと早く知っていれば、心の準備ができたかもしれない」と感じる方は少なくありません。
ただし、心の準備ができていれば必ず受け止められたかというと、それも保証はありません。
妊娠中に陽性結果を受け取ること自体、大きな心の負担になります。
だからこそ、後述するように「受けた後悔」もあります。
ケース3:妊娠中の不安が消えないままだった
公的調査では、「妊娠初期はNIPTを受けるつもりだったが、夫婦で話し合って受けないことにした。でも出産まで不安が消えなかった」という趣旨の声も収録されています¹。
「マタニティライフを心から楽しめなかった」「常に不安で眠れない夜があった」という声は決して珍しくありません。
不安が強い方ほど、「知らないことの不安」より「知ることの覚悟」のほうが楽になる場合があります。
逆に、「知ること自体が怖い」方は、検査を受けないほうが穏やかに過ごせることも。
どちらが正解ということはなく、ご自身の性格との相性です。
ケース4:検査できる時期を過ぎてしまった
NIPTには受検可能な時期があります。
一般的には妊娠10週前後から受けられますが、施設によって受け入れ条件が異なり、受検可能期間にも上限があります。
「迷っているうちに、気づいたら検査時期を過ぎていた」というケースで、「自分で決めた」という納得感が得られないまま出産を迎えるのは、後悔につながりやすいパターンです。
迷っているうちに時間が過ぎるくらいなら、まずは情報を集めること、夫婦で話し合うことを早めに始めるほうが、結果的に後悔は少なくなります。
ケース5:夫婦で話し合いきれていなかった
公的調査の声には、「夫が初めから検査に反対していた」「夫婦で意見が違った」といった話も含まれています¹。
出産後に子どもに何かがわかったとき、夫婦の意見が食い違って関係がこじれるケースもあります。
「あのとき検査を受けようと言ったのに」「あのとき大丈夫って言ったのは、あなただ」。
お互いを責めたいわけではないのに、つい出てしまう言葉です。
検査を受ける・受けないにかかわらず、「夫婦で十分に話し合った」という事実そのものが、その後の家族関係を守ることになります。

逆に、出生前診断を受けなくても後悔しにくい人

公的調査の声を読んでいると、検査を受けない選択をしても後悔せず、むしろその選択を肯定的に振り返っている方もたくさんいます¹。
共通点を整理すると、次のような方です。
結果にかかわらず出産する意思が固い
公的調査では、ダウン症のお子さんを育てている方が「検査をしなくて本当によかった。受けていたら中絶していたかもと思うと、こんなに可愛い我が子と会えなかった」と語る声¹も収録されています。
この場合、検査結果は出産の判断材料にはなりません。
結果を知ることは「準備のため」になるかもしれませんが、必須ではないと判断する方も多いです。
検査結果を知ること自体が精神的負担になる
「もし陽性だったら、出産までの数か月間、自分は耐えられない」と感じる方もいます。
陽性結果を受け取った妊婦さんが、その後の妊娠期間をどう過ごすかは、本人の精神的な強さやサポート体制によって大きく変わります。
「知らないでいるほうが穏やかに過ごせる」と自分で判断できる方は、無理に受ける必要はありません。
ただし、その判断は「ちゃんと考えた末の選択」である必要があります。
「なんとなく怖いから」ではなく、「自分の性格や状況を踏まえると、知らない選択のほうが合っている」と納得できているかどうかです。
不安をきちんと整理した結果、受けない選択をした
公的調査の声に、こういう話があります。
「妊娠初期はする気持ちがとても強かった。障害がある子を育てる自信もお金も環境もないと思っていたから。しかし、不安に思っていることをきちんと整理して調べたり先生に尋ねたりして自分なりに解決した結果、しないことにしました」¹
これは「検査を受けない=何もしない」ではなく、「検査を受けないという選択肢を、調べて、相談したうえで選んだ」という違いです。
プロセスを踏んでいるからこそ、納得感があります。
【実体験】我が家がNIPTを受けた理由

ここからは、私たち夫婦が三女の妊娠時にNIPTを受けた経緯を、正直にお話しします。
特定のクリニックや検査を勧めるための話ではありません。
私たちと似た状況の方が、判断材料の一つとして読んでくださればと思います。
長女の障害がわかった日のこと
長女は、重度知的障害を伴う自閉症です。
発語はなく、言葉でのコミュニケーションは難しい状態。
多動傾向もあり、癇癪も日常的にあります。
長女の発達の遅れに気づいたのは1歳半健診のころでした。
指差しがない。
目が合いにくい。
名前を呼んでも振り向かない。
「個人差ですよ」と言われ続けながら、月日が経つほど不安だけが増えていきました。
正式に診断がついた日のことは、今でも鮮明に覚えています。
妻と二人で診断を受けた部屋を出てから、駐輪場までの数十メートルを無言で歩いたこと。
妻の涙が止まらなかったこと。
私自身は必死に涙をこらえて前を向こうと思っても、「これからどうしよう」という頭の中の声が響いていたこと。
そこから、療育の毎日が始まりました。
週に何度も療育施設に通い、家でも長女に合わせた関わりを工夫し、できることが一つ増えるたびに夫婦で喜ぶ。
長女は彼女なりに、確実に成長してくれています。
これは何より誇らしいことです。
そのうえで正直にお伝えすると、発達障害児を含む3人育児は、想像していたよりはるかに大変です。
夫婦の体力、精神力、時間、お金、そしてきょうだい児への影響。
「お姉ちゃんばかり見てる」と二女に言われたときの胸の痛み。
長女の癇癪で外出が難しくなる現実。
療育費、通院にかかる時間、将来の介護を見据えた貯蓄。
すべてをやりくりしながら毎日を回すのは、簡単ではありません。
三女の妊娠がわかったとき、最初に考えたこと
三女の妊娠がわかったとき、もちろん喜びはありました。
同時に、これまで感じたことのない種類の不安が押し寄せました。
「もし三人目にも重い疾患があったら、家族全員が持ちこたえられないのではないか」
「長女と二女に、十分な関わりをしてあげられなくなるのではないか」
「経済的にも、精神的にも、限界を超えてしまうのではないか」
これは、長女の障害を否定する気持ちではありません。
長女のような障害を持つ子を育てる大変さを、身をもって知っているからこその不安でした。
世の中には「障害がある子も同じくらい可愛い」という言葉があります。
本当にその通りです。
長女は私たちの宝物です。
ただ、可愛いという気持ちと、生活の現実的な負担は別問題です。
両方が同時に存在することを、私たちは身をもって知っていました。
妻と何度も話し合った夜のこと
妊娠がわかった日から、毎晩のように妻と話し合いました。
最初、妻は迷っていました。理由は大きく2つあったと思います。
一つは約20万円という費用の高さです。
長女の療育費や将来の備えを考えると、決して気軽に出せる金額ではありません。
もう一つは、「もし陽性と出たら、自分はその先の判断ができるだろうか」という不安でした。
お腹の中の子をあきらめるという決断を、自分が下せる気がしない。
だから、決められないなら受けないほうがいいのではないか。
妻はそう感じていました。
一方、私(夫)は「受けるべきだ」と考えました。
私が考えていたのは、3人育児の現実です。
長女には重度知的障害を伴う自閉症があり、すでに療育・通院・日々のケアで家族のリソースは限界近くまで使われています。
健常児の二女もまだ幼く、十分に手がかかります。
この状況で、もし三人目にダウン症などの重い疾患があった場合、頻繁な通院、長期にわたる医療ケア、専門機関への送り迎えが新たに加わることになります。
私たち夫婦の体力、時間、金銭、そして二女に向ける関心。
これ以上の負荷がかかれば、長女と二女を含めた家族全体を支えきれなくなる。
それが、私の率直な見立てでした。
そのうえで、私は妻にこう伝えました。
「もしNIPTで陽性が出たら、自分はお腹の赤ちゃんをあきらめるつもりでいる」と。
(陽性が出た場合は、NIPTだけで結論を出すのではなく、遺伝カウンセリングを受け、羊水検査や絨毛検査などの確定的検査で確認したうえで、妊娠継続について夫婦で判断するつもりでした。)
これは決して軽い結論ではありません。
長女を育てている私たちが、染色体疾患を理由に妊娠を継続しないという選択をすることへの葛藤も、当然ありました。
それでも私が受けるべきだあと思ったのは、「目の前の長女と二女を、いま現に守らなければならない」という現実があったからです。
長女にはこれからも長い療育の道があります。
二女にはまだまだ親としてやるべきことがあります。
きれいごとでは家庭は回りません。
私たちが今守るべき家族を守るために、苦しい決断であっても、知る選択をしたい。
最初は受けるかどうかで迷っていた妻も、何度も話し合いを重ねるうちに、「家族全体のバランスを守るための判断として受ける」という考えに賛同してくれました。
妻が折れたわけではなく、私の考えと現実的な見通しに納得してくれたうえでの結論でした。
意見が割れていた状態から、夫婦が同じ方向を向くまでに重ねた対話のプロセスそのものが、後から振り返ると一番大切な財産だったと感じます。
結論だけが大事なのではなく、その結論にどう辿り着いたか。
その過程が、後悔の有無を分けるのだと思います。
受けなかったら後悔していたと思う理由
NIPTでわかるのは、ダウン症候群(21トリソミー)、18トリソミー、13トリソミーといった特定の染色体疾患の可能性です²。
長女のような自閉症や知的障害は、NIPTではわかりません。
それでも私たちが検査を受けるべきだと思ったのは、「せめて重い染色体疾患の可能性だけでも、事前に知って準備をしたかった」からです。
改めて正直に書きます。
私(夫)は、NIPTで陽性が出た場合はお腹の赤ちゃんをあきらめるつもりでいました。
長女を育てている当事者として、これは決して軽々しく言える言葉ではありません。
長女は私たちの宝物であり、長女の人生を否定する気持ちは一切ありません。
それでも、今の家族構成と、長女と二女に必要なケアの量を考えたとき、これ以上重い医療的ケアが加わったら家族が立ち行かなくなるという現実的な見立てがありました。
一方で、もうひとつ私たちの中で大事にしていた考えがあります。
それは、「NIPTでは知的障害や自閉症はわからない。でも、体さえ丈夫に生まれてきてくれれば、もし長女と同じような特性があったとしても、療育を通じて引き上げてあげられる」という思いでした。
長女は、療育を通して確実に成長してきました。
通い始めた頃と今とでは、できることがまったく違います。
療育という積み重ねの力を、私たちは身をもって知っています。
だからこそ、身体に重い疾患さえなければ、特性があってもやっていける。療育を頑張ればいい。
そう考えました。
逆に言えば、私たちが避けたかったのは、療育では補いきれない、長期にわたる医療的ケアが必要な状況です。
NIPTで調べられる13・18・21トリソミーのうち、特に18トリソミーや13トリソミーは合併症が重いケースもあります。
21トリソミー(ダウン症)でも、心疾患などを伴う場合は継続的な通院・手術が必要になることがあります。
これらの可能性を事前に知ったうえで、判断したいというのが、私たちの結論でした。
これは私たちの判断であって、同じ状況でも違う結論を出すご家庭はあると思います。
「陽性でも産む」も「陽性なら中絶する」も、どちらも軽い決断ではありません。
私たちの結論を肯定する目的でこの記事を書いているのではなく、私たちが何をどう考えてこの結論に至ったかを正直にお伝えすることで、同じように迷っている方の判断材料になればと思っています。
そしてもし、私たちが検査を受けずに出産を迎えていたら。
おそらく、出産までの数か月間ずっと「もし重い疾患があったらどうするか」を悶々と考え続けていたはずです。
そして万が一、出産後に重い染色体疾患があるとわかったとき、「あのとき検査を受けて、家族を守る選択肢を持っておけばよかった」と、後悔したのではないかと思います。
私たちは、検討の末、あるNIPTクリニックで検査を受けました。
費用は約20万円、結果は約1週間後にメールで届きました。
結果は陰性でした。
体験した感想として書いておくと、「陰性だから安心」というよりも、「陽性が出ても受け止めて家族を守る判断をする、と覚悟したうえで受けた検査だった。
その覚悟と結果を、自分たちで最後までやりきった」という納得感のほうが大きかったです。
実際にどのクリニックで受けたか、当日の流れや結果通知の様子は、以下の記事で詳しく書いています。
NIPTでわかること・わからないこと

NIPTを検討するうえで、最も誤解されやすいのが「何がわかる検査なのか」です。
ここは判断の根幹なので、こども家庭庁「妊娠中の検査に関する情報サイト」²と日本医学会出生前検査認証制度等運営委員会³の公開情報をもとに整理します。
主にわかるのは特定の染色体疾患の可能性
NIPTで対象とされている主な疾患は、13トリソミー、18トリソミー、21トリソミー(ダウン症候群)の3つの染色体疾患です²。
施設によっては、これ以外の染色体疾患や性染色体異常、微小欠失疾患などを検査項目に含めている場合もあります。
検査項目が多ければ良いというものではなく、項目が増えるほど偽陽性のリスクや結果の解釈の難しさも増えるため、注意が必要です。
NIPTは確定診断ではない
ここは特に重要です。NIPTは「非確定的検査」です²。
NIPTで「陽性」と出ても、それは「染色体疾患の可能性が高い」という意味であって、確定ではありません。
陽性結果が出た場合、確定診断のためには羊水検査や絨毛検査といった「確定的検査」を行う必要があります。
逆に「陰性」と出ても、対象としている3つの染色体疾患の可能性が低いという意味であって、すべての先天性疾患がないことを保証するものではありません。
「NIPTは検出率が高い検査」という説明は事実ですが、「検出率が高い=確定」ではないことを理解しておく必要があります。
発達障害やすべての病気がわかるわけではない
NIPTでわからないことを整理します。
- 自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)などの発達障害
- 知的障害の多く
- 心疾患などの先天性疾患の多く
- 出生後に判明する代謝異常など
これらは、NIPTの対象ではありません。
エコー検査や、出生後の検査・経過観察で判明することが多いものです。
私の長女の自閉症も、もちろんNIPTではわかりません。
NIPTを受けたからといって、「障害のある子が生まれない」ことを保証するわけではないんです。
ここを誤解したまま検査を受けると、「陰性だったのに障害があった」という形の別の後悔につながりかねません。
陽性だった場合は確定的検査や専門相談が必要
NIPTで陽性結果が出た場合、次のステップとして以下のような対応が想定されます。
ひとつは、確定的検査(羊水検査・絨毛検査)を受けるかどうかの判断です。
これらの検査には、ごくわずかですが流産のリスクがあります。
もうひとつは、遺伝カウンセラーや臨床遺伝専門医との相談です。
検査結果の意味、その疾患を持つお子さんの実際の生活、利用できる支援制度などについて、専門的な情報提供を受けることができます。
陽性時のサポート体制は、施設によって大きく異なります。
確定検査費用を施設側で負担してくれるところ、遺伝カウンセリングを無料で複数回受けられるところなどがあるため、検査を受ける前に確認しておくことが大切です。

NIPTを受けて後悔する可能性もある【公的調査と当事者の声から】

「受けなかった後悔」だけでなく、「受けたことによる後悔」もあります。
公的調査の声にも、検査を受けたあとに重い決断を迫られた方の苦悩が記録されています¹。
陽性時の心理的負担は想像以上に重い
NIPTで陽性結果が出た場合、その後の妊娠期間は精神的に非常に厳しいものになります。
確定的検査をするかどうか、結果次第でどうするか、家族にどう伝えるか、どこで産むか。
短期間で重い決断を連続して迫られる状況です。
公的調査の声には、こう記録されているケースもあります。
「胎動確認後の結果を聞くのが本当に怖かった。陽性だった場合は中絶すると夫婦で決めていました。でも、陽性だったら中絶したかどうか、今でもわからない」¹
事前に夫婦で「もし陽性だったらどうするか」を決めていたとしても、実際にその場面が来たときの感情は、想像と違うことがあります。
これが検査を受けることのリアルです。
夫婦間の意見の違いが顕在化する
検査結果が出た後、夫婦の意見が食い違うことがあります。
「妊娠を継続したい」
「困難でも産みたい」
「現実的な負担を考えると難しい」
どの意見も間違いではありませんが、短期間で結論を出さなければならない状況で、意見が割れると関係が大きく揺れます。
検査を受ける前に、「もし陽性だったらどう考えるか」を話し合っておくことが、ここでも重要になります。
話し合いそのものが辛いものですが、結果が出てから話し合うほうがもっと辛いです。
費用負担
NIPTは原則として保険適用外の自費診療です。
施設によって金額の幅はありますが、家計への負担は決して小さくありません。
複数の検査項目をオプションで追加すると、さらに費用は上がります。
費用を理由に決めるべきではない一方で、家計の現実も無視できません。
夫婦で「いくらまでなら出せるか」を事前に話し合うことが大切です。
検査結果だけでは決められない問題
NIPTの結果が陽性でも陰性でも、それだけで「どうすべきか」が決まるわけではありません。
「陽性ならこうする」「陰性ならこう過ごす」を、結果が出る前から夫婦で話し合っておかないと、結果を受け取った瞬間に思考停止してしまうことがあります。
検査は判断材料の一つであって、判断そのものではないんです。
後悔しないために夫婦で話し合うべき5つの質問

ここまでお読みいただいた方は、すでに「自分たちで決める」ことの重要性を感じていただけていると思います。
では、具体的に何を話し合えばいいのか。
私たち夫婦が話し合った内容と、後から「これは聞いておいてよかった」と感じた質問を、5つにまとめます。
質問1:もし陽性だったら、どうするか
最も重い質問ですが、避けては通れません。
「陽性なら確定的検査をするか」
「確定診断が出たら、どう判断するか」
「妊娠継続を選ぶ場合、どんな準備が必要か」
正解を出す必要はありません。
お互いがどう感じているかを共有することが目的です。
意見が違っても構いません。
違うとわかった時点で、対話を続ける材料になります。
質問2:検査で何を知りたいのか
「染色体疾患の可能性を知りたい」のか、「妊娠中の不安を減らしたい」のか、「出産の準備をしたい」のか。
動機を言語化すると、必要な検査が見えてきます。
たとえば「不安を減らしたい」が主な目的なら、検査を受けても陽性と出た場合は逆に不安が増える可能性があります。
動機と手段が合っているか、確認する作業です。
質問3:どこまでの検査を希望するか
NIPTの基本3項目(13・18・21トリソミー)だけにするか、性染色体や微小欠失も含めるか。
あるいはNIPTではなく、エコー検査と母体血清マーカー検査の組み合わせで十分か。
検査項目を増やすほど、得られる情報は増えますが、解釈の難しさや偽陽性のリスクも増えます。
情報量と心の負担はトレードオフだと考えてください。
質問4:誰に相談するか
夫婦だけで決めようとせず、専門家を活用する前提で考えます。
かかりつけの産婦人科医に相談する、検査を受けるクリニックの遺伝カウンセラーに相談する、自治体の妊婦相談窓口を使う、こども家庭庁の情報サイトを参考にする²。
「相談先を持っている」こと自体が、後悔を減らします。
質問5:費用はいくらまで許容できるか
NIPTは自費です。
検査費用に加え、陽性時の確定検査費用、遠方の施設に通う場合の交通費なども考慮が必要です。
「出せる金額」と「出したい金額」は違います。
家計の中での優先順位を、率直に話し合っておくことが大切です。

NIPTを検討するなら、クリニック選びで見るべき7つのポイント

ここまでの話し合いを経て、「NIPTを検討してみよう」と決めた方に向けて、クリニック選びで確認すべきポイントを整理します。
検査自体は同じNIPTでも、施設によってサポート体制や費用、対応範囲は大きく違います。
「どこでも同じ」ではありません。
なお、NIPTを実施する施設には、日本医学会出生前検査認証制度等運営委員会が認証している施設と、そうでない施設があります³。
それぞれに特徴があり、ご家庭が重視するポイントによって選び方が変わります。
一律にどちらが良いということはなく、以下の7項目を比較して、ご自身に合う施設を選ぶのが現実的です。
ポイント1:費用総額
検査費用そのものに加えて、初診料、カウンセリング費用、追加検査の費用、交通費まで含めた総額を確認します。
施設によって分割払いに対応している場合もあります。
一括で支払うのが厳しい場合は、選択肢を広く持つことができます。
ポイント2:検査可能週
施設によって、何週から検査を受け付けるかが異なります。
一般的には妊娠10週前後からですが、早ければ妊娠6週から受け付けている施設もあります。
施設ごとに条件が違うので、迷っている間に時期を逃さないよう、早めに各施設の受け入れ条件を確認しておくとよいです。
ポイント3:結果通知までの日数と方法
採血から結果通知まで、どのくらいかかるか。
最短で1〜2日、長いと2週間程度と幅があります。
通知方法はメールか、対面か、郵送か。
結果を待つ期間は精神的に負担になりやすいので、自分にとって合った通知方法・期間の施設を選ぶことが、心の安定につながります。
ポイント4:検査項目の範囲
3つの染色体疾患(13・18・21トリソミー)のみ調べる基本プランか、性染色体・微小欠失・全染色体まで調べるプランか。
項目が多いほど費用は上がり、偽陽性のリスクも上がります。
ご家庭が「何を知りたいか」を整理してから選ぶことが大切です。
ポイント5:遺伝カウンセリングの有無と内容
検査前後のカウンセリングを、誰が、どのくらいの時間、どんな内容で行うのか。
認定遺伝カウンセラーや臨床遺伝専門医が在籍している施設もあれば、医師の説明のみの施設もあります。
検査結果の解釈や、その後の判断は専門的な知識が必要な場面が多いため、カウンセリング体制は重視すべきポイントです。
施設によっては電話やオンラインで無料相談ができるところもあります。
ポイント6:陽性時のサポート
陽性結果が出た場合に、その施設がどこまでサポートしてくれるか。
確定検査(羊水検査)の費用を施設が全額または一部負担する制度を持つ施設もあります。
心理面のサポート、産科との連携、複数回のカウンセリングなど、サポート内容は施設ごとに異なります。
陽性時は冷静な判断が難しい状態になるため、施設側のサポート体制が頼りになります。
ポイント7:通いやすさ・全国対応の有無
通院が必要な検査なので、通いやすさは重要です。
全国に提携クリニックを持っている運営会社もあれば、東京の特定のクリニックのみで実施している施設もあります。
地方在住の方は、提携クリニックの数が多い運営を選ぶか、オンラインカウンセリング+近隣の提携施設で採血のみ、という形を取れる施設を選ぶのが現実的です。

私たちが比較したNIPTクリニック

私たち夫婦が三女の妊娠時にNIPTを検討した際、複数のクリニックを比較しました。
ここでは、その中から特徴の異なる3つのクリニックを取り上げて、ざっくりとした方向性をまとめます。
ただし、料金や検査週、対応範囲は変更されることがあるため、最新の数値や詳細は各公式サイトおよび比較記事をご確認ください。
| クリニック | 強みの方向性 | こんな方向け |
|---|---|---|
| 平石クリニック | 全国に提携施設多数。実績重視のオールラウンド型。 | 通いやすさと実績の両方を重視したい方 |
| ミネルバクリニック | 臨床遺伝専門医が在籍し、検査内容の専門性が強み。 | 検査項目の幅と専門性を重視したい方 |
| DNA先端医療株式会社 | 全国の提携クリニックと連携した検査体制。 | 提携施設の選択肢の広さを重視したい方 |
これは「ランキング」や「おすすめ順」ではありません。
それぞれ強みの方向が違うので、ご家庭の優先順位に合わせて選ぶものです。
各施設の費用、検査可能週、結果通知日数、サポート体制などの詳細な比較は、比較記事と個別のレビュー記事をご覧ください。
よくある質問(FAQ)

Q
出生前診断を受けなかったら必ず後悔しますか?
A
いいえ、必ず後悔するわけではありません。
公的調査では、「検査をしなくて本当によかった」と語る妊婦さんや出産を経験した方の声¹も多数収録されています。
後悔しやすいのは、「情報不足のまま、なんとなく決めてしまった」「夫婦で十分に話し合えなかった」といったケースです。
選択そのものより、判断プロセスのほうが後悔に影響します。
Q
NIPTで陰性なら絶対に安心ですか?
A
NIPTで陰性が出ても、対象としている3つの染色体疾患(13・18・21トリソミー)の可能性が低いという意味であり、すべての先天性疾患や発達障害がないことを保証するものではありません²。
私の長女の自閉症のように、NIPTではわからない疾患・障害は多くあります。
「陰性=完全に安心」と考えるのは誤解です。
Q
NIPTはいつまで受けられますか?
A
施設によって異なります。一般的には妊娠10週前後から受けられ、上限は施設によって異なります。
早ければ妊娠6週から検査を受け付けている施設もあります。
検討中の方は早めに各施設の条件を確認することをおすすめします。
Q
認証施設と非認証施設は何が違いますか?
A
日本医学会の出生前検査認証制度等運営委員会が認証した施設と、そうでない施設があります³。
それぞれに特徴があり、一律に優劣はつけられません。
認証施設は遺伝カウンセリング体制が制度として整えられている特徴があり、非認証施設には検査項目の幅、検査可能週の早さ、結果通知の早さ、通いやすさ、全国対応などで強みを持つ施設があります。
重視するポイントによって、合う施設は変わります。
Q
夫婦で意見が合わない場合はどうすればいいですか?
A
意見が合わないこと自体は、悪いことではありません。
意見が違うとわかった時点で、対話を始められるからです。
私たち夫婦も最初は意見が割れていました。
無理にどちらかに合わせるのではなく、お互いがなぜそう考えるのかを聞くことから始めてください。
必要に応じて、遺伝カウンセラーや自治体の妊婦相談窓口など、第三者を交えて話し合うのも一つの方法です。
Q
費用が高くて迷っています。
A
NIPTは自費診療なので、費用負担は決して小さくありません。
施設によって費用体系や分割払いの可否が違うため、複数の施設の費用総額を比較することをおすすめします。
ただし、費用だけで決めると、サポート体制や陽性時の対応で後悔することもあります。
費用、内容、サポートの3点で総合的に判断してください。
Q
35歳未満でもNIPTは受けられますか?
A
はい、受けられます。施設によって年齢制限の方針が異なりますが、35歳未満でも受け付けている施設は多くあります。
年齢に関わらず、不安があるなら検討の対象になります。
詳細は各施設の受け入れ条件をご確認ください。
Q
上の子に障害がある場合、次の子の検査は意味がありますか?
A
NIPTで調べられるのは特定の染色体疾患のみで、自閉症や知的障害といった発達障害はNIPTでは調べられません²。
上の子と同じタイプの障害が次の子にもあるかどうかを判断する目的では、NIPTは適していません。
ただし、染色体疾患のリスクを調べたい、心の準備をしたいという目的であれば、検討の価値はあります。
判断に迷う場合は、遺伝カウンセラーへの相談が有効です。
Q
検査結果がメールで届くのは怖いのですが、対面で受け取ることもできますか?
A
施設によって結果通知の方法が選べる場合があります。
メール、郵送、対面、電話など、施設ごとに対応が異なります。
結果を一人で受け取りたくない場合は、対面通知に対応している施設や、夫婦同席で説明を受けられる施設を選ぶとよいでしょう。
まとめ:後悔を減らすために、まずは正しく知ることから
最後にもう一度、この記事の結論をお伝えします。
出生前診断を受けるかどうかで、後悔するかどうかは決まりません。
「夫婦で十分に話し合い、情報を集めたうえで、自分たちで決めたかどうか」が、後悔の度合いを決めます。
「受けなかった後悔」も「受けた後悔」も、共通する原因は準備不足です。
私たち夫婦は、長女の障害児育児を経験していたからこそ、NIPTを受けるという選択をしました。
同じ状況でも「受けない」と判断する方はいますし、その判断も等しく尊重されるべきものです。
正解は一つではありません。
そして何より、この記事を一人で読み終えるのではなく、ぜひパートナーと一緒に話し合うきっかけにしてください。
それが、後悔を減らすための一番の近道だと、私たちは考えています。
参考資料・出典
本記事の制度・検査内容に関する記述、および妊婦さんや出産を経験した方の声の引用は、以下の公開情報を参照しています。
最新の正確な情報は、各公式サイトでご確認ください。
- 日本医学会 出生前検査認証制度等運営委員会「検査を受けた人の声 受けなかった人の声」
https://jams-prenatal.jp/voices/
(※掲載されている声は、令和3年度厚生労働科学研究費補助金成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業「出生前検査に関する妊産婦等の意識調査や支援体制構築のための研究」、および河合蘭・ベビカム共同インターネット調査「出生前診断のニーズに関するアンケート」2020年10月実施に基づく) - こども家庭庁「妊娠中の検査に関する情報サイト」
https://prenatal.cfa.go.jp/ - 日本医学会 出生前検査認証制度等運営委員会「一緒に考えよう、お腹の赤ちゃんの検査」
https://jams-prenatal.jp/ - 日本産科婦人科学会「母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)に関する指針」
https://www.jsog.or.jp/news/pdf/NIPT_kaiteishishin.pdf - 厚生労働省「NIPT等の出生前検査に関する専門委員会報告書」
https://www.mhlw.go.jp/content/000783387.pdf

