「うちの子、バイバイの手のひらが自分側を向いている……これって大丈夫?」
「『逆さバイバイは自閉症のサイン』ってネットで見て、不安で眠れない……」
1〜2歳ごろのお子さんに見られる「逆さバイバイ」。
気になって検索すると、自閉症や発達障害といった言葉が並び、心配でたまらなくなりますよね。
最初に、いちばん大切なことをお伝えします。

逆さバイバイは、健常児にもごく普通に見られる動作です。
そして、逆さバイバイ「だけ」で発達障害と判断することは、医師にもできません。
1歳6か月児健診のスクリーニングで広く使われている「M-CHAT(乳幼児期自閉症チェックリスト修正版)」でも、逆さバイバイそのものは項目に入っていません。
代わりに重視されているのは、指さし、呼名反応、動作模倣、ふり遊びといった社会性のマイルストーンです(発達障害ナビポータル|M-CHATについて、国立精神・神経医療研究センター 神尾陽子氏)。
この記事では、重度知的障害を伴う自閉症の長女を育ててきた父親(知的障がい支援士/子ども発達障がい支援アドバイザー、元教材編集者)として、わが家の体験と公的機関・査読論文の情報をもとに、
- 逆さバイバイは本当に問題ないのか
- 健常児と気になるケースを見分ける目安
- 年齢別(1歳・1歳半・2歳・3歳)の見守りライン
- 家庭でできる関わり方となおし方
- どこに相談すればよいのか
を、わかりやすく読めるようにまとめました。
読み終わるころには、「明日から何をすればよいか」がはっきりしているはずです。
逆さバイバイは1〜2歳ごろの健常児にもよく見られ、多くは2〜3歳までに自然に消えます。逆さバイバイ単体で発達障害とは判断できません。
ただし、3歳以降も続く・指さし・呼名反応・言葉・視線・模倣など他の発達サインも複数気になる、という場合は、かかりつけ医や保健師、地域の発達相談窓口に相談しましょう。
早めに相談することは、健常児であってもデメリットになりません。
目次
逆さバイバイとは?【まずは正しく知る】

逆さバイバイとは、バイバイをするときに手のひらを自分側に向けて振る仕草のことです。
「逆手バイバイ」と呼ばれることもあります。
子どもにとって「自分から見えているもの」と「相手から見えているもの」を切り替えるのは、思った以上に高度な認知作業です。
バイバイは本来、相手に手のひらを見せる動作ですが、子どもは自分に見えている景色(=自分側に向いた手のひら)を、そのまま再現してしまうことがあります。
これが、逆さバイバイの正体です。
そもそも「バイバイ」自体が、けっこう高度な動作
意外と知られていませんが、「バイバイをする」という動作模倣そのものが、乳幼児にとっては高度なスキルです。
小児保健研究に掲載された松井ら(2017)の調査では、月齢7〜21か月の定型発達児93名を対象に、バイバイの動作模倣の出現時期を調べています。
その結果、
- 月齢9か月で56%がバイバイをする
- 月齢12か月で95%がバイバイをする
- 月齢14か月以降は全員(100%)がバイバイをする
という結果が報告されています(出典:松井学洋ほか「微細運動と言語能力の発達からみた模倣動作『バイバイ』」小児保健研究 第76巻 第6号, 2017)。
つまり、1歳前後で「バイバイができる/できない」という段階を経て、ようやく「正しい向きでバイバイができる」という次のステージに進むんです。
逆さバイバイは、その移行期に出やすい自然な現象と言えます。
なぜ逆さバイバイをするのか
主な理由は、次の2つです。
① 鏡像反応(自分と相手の視点を切り替えられない)
子どもは、相手の動作を「自分が見たまま」に真似します。
相手が手のひらをこちらに向けて振っているとき、自分から見える「自分側に向いた手のひら」をそのまま再現してしまうんです。
「自分の手のひらは相手にも見えている」と思い込んでしまう、と言い換えてもよいかもしれません。
これは他者視点の獲得が未発達な時期によく見られるもので、健常児でもごく自然に通る道です。
② 手や指のコントロールが発達途中
大人にとって何でもない「手を振る」動作も、幼児にとっては腕・手首・指を協調させて動かす複雑な運動です。
前述の松井ら(2017)の研究でも、おもちゃや鉛筆を持って動かすといった微細運動が発達してくると、バイバイができる子の割合が増えることが示されています。
このどちらも、成長とともに解消されていきます。
逆さバイバイは問題ない?【結論:多くの場合は心配いりません】

冒頭でもお伝えしたとおり、逆さバイバイは多くの健常児に見られる、自然な発達の一過程です。
1〜2歳ごろにとくによく見られ、ほとんどの子は2〜3歳までに自然と正しいバイバイができるようになります。
「逆さバイバイ=発達障害」と短絡的に結びつけるのは、正確な見方ではありません。
実際、自閉スペクトラム症(ASD)と診断されているお子さんでも逆さバイバイをしないケースは多くあります。
逆もまた然りで、逆さバイバイをしていても定型発達のお子さんは大勢います。
実際、発達障害ナビポータル(厚生労働省・文部科学省が監修する公的な情報サイト)の「自閉スペクトラム症」解説にも、ASDの乳幼児期の早期サインとして挙げられているのは、
「目と目を合わせる、指さし、微笑み返し、後追い、模倣、人見知りといった社会的行動の弱さ」
であり、逆さバイバイは個別項目として挙げられていません(発達障害ナビポータル|自閉スペクトラム症)。

大切なのは、逆さバイバイという「ひとつの行動」ではなく、お子さんの発達全体を見ることです。
健常児と「少し気になるケース」を見分ける目安

逆さバイバイは、それ単体ではあまり判断材料になりません。
判断のヒントになるのは、「年齢」と「他の発達サインとの重なり方」です。
ここで参考にしたいのが、1歳6か月児健診のスクリーニングで広く使われているM-CHAT(乳幼児期自閉症チェックリスト修正版)の項目です。
神尾ら(2015)の地域ベース大規模追跡研究によると、M-CHATの23項目のうち、後のASD診断との関連が特に高かったのは次の6項目でした(出典:発達障害ナビポータル|M-CHATについて)。
- 要求の指さし
- 動作模倣
- ふり遊び
- 指さし追従(親が指さしたほうを見るか)
- 言語理解
- 興味ある物を見せに持ってくる
これらは「あって当たり前の社会的行動が、その月齢にあるか」を見るための項目です。
逆に言えば、逆さバイバイそのものよりも、こうしたマイルストーンの状況のほうが、ずっと判断材料になるということです。
下の表を、ご家庭でのチェックの目安として使ってみてください。
これは医学的な診断基準ではなく、あくまで「相談を考えるかどうかのライン」として参考にしてもらえればと思います。
| 観点 | 見守りで様子を見てよい目安 | 相談を考えたいサイン |
|---|---|---|
| 年齢 | 1〜2歳ごろの一過性 | 3歳以降も主なバイバイが逆さのまま |
| 言葉の理解 | 「ちょうだい」「ねんね」など簡単な指示が通る | 簡単な指示への反応が乏しい |
| 言葉の表出 | 1歳6か月で意味のある単語が1語以上出る | 2歳すぎても単語が出ない/一方通行 |
| 要求の指さし | 欲しいものを指さして要求する | 指さしをしない |
| 興味の指さし/指さし追従 | 親の指さしたほうを見る/自分の興味を共有 | 共有が少ない |
| 呼名反応 | 名前を呼ぶと振り向く | 呼んでも振り向かないことが多い |
| 視線 | 目が合う/視線を共有する | 視線が合いにくい |
| 動作模倣 | バイバイ以外のまね(パチパチ等)もする | まね全般が少ない |
| ふり遊び | 「もしもし」「いただきます」のまねをする | ふり遊びをしない |
| 遊び方 | おもちゃを本来の使い方で遊ぶ | 並べる・回すなど独特な遊び方が中心 |
「相談を考えたいサイン」が3つ以上、しかも数か月以上続いている場合は、後述する相談窓口で一度話を聞いてもらうのがおすすめです。
これはM-CHATの「3項目基準(23項目中3項目で不通過なら要フォローアップ)」の考え方に倣ったものです。
ひとつ強調しておきたいのは、当てはまる項目があるからといって、それだけで発達障害と決まるわけではないということ。
M-CHATの研究でも、「陽性のうち実際にASDと確定診断されるのは約半数」と報告されています(神尾ら, 2014)。
子どもの発達には大きな個人差があり、一時的にこうした傾向が出る子も少なくありません。

逆に、当てはまるサインが少なくても、親御さんが「育てにくさを感じる」「ずっと気になる」という直感を持っているのであれば、それは大切なサインです。
一人で抱え込まず、相談してください。
なお、わが家の長女がどんなサインで自閉症に気づいたのかは、「長女の自閉症に気づいたきっかけ」で詳しく書いています。
あわせて、「1歳半健診で見られる発達障害のサイン」、「指さしをしないときに考えられること」も参考にしてみてください。
年齢別の見守り目安|1歳・1歳半・2歳・3歳

ここでは、相談窓口でよく聞かれる「何歳までなら様子見で大丈夫?」という不安に、年齢別にお答えしていきます。
1歳ごろ:そもそもバイバイ自体が出始める時期
前述のとおり、月齢9か月で56%、12か月で95%の子がバイバイの動作模倣を始めます(松井ら, 2017)。
手のひらの向きまで意識する余裕はまだなく、健常児でも逆さバイバイになることはよくあります。
この時期に逆さバイバイをしていても、心配する段階ではありません。
むしろ確認したいのは「バイバイをしようとしているか」「他の動作模倣(パチパチ、いただきますのジェスチャーなど)はあるか」のほうです。
1歳半ごろ:他のサインと合わせて観察を
1歳半健診のタイミングで、保健師さんから「逆さバイバイをしますか?」「指さしはしますか?」と聞かれることがあります。
これは逆さバイバイ単独が問題なのではなく、指さし・呼名反応・言葉・視線などとセットで発達全体を確認するためです。
このとき、逆さバイバイ以外の項目は問題なくクリアしているなら、まずは「経過観察」になることがほとんどです。
逆に、複数の項目で気になる点がある場合は、市の発達相談につなげてもらえるはずです。
詳しい1歳半健診のチェックポイントは、「1歳半で見られる発達障害のサイン」にまとめています。
2歳ごろ:徐々に正しいバイバイへ移行する時期
多くの子は、2歳前後から自分と相手の視点の違いに気づき始め、手のひらの向きも自然と相手に向けられるようになります。
「最近は正しいバイバイの日も増えてきた」という変化があれば、見守りで大丈夫なケースが多いです。
3歳ごろ:主なバイバイが逆さなら相談を検討
ひとつの目安として、3歳を過ぎても主なバイバイが逆さのままで、かつ言葉や対人面など他にも気になる点が複数ある場合は、専門機関への相談を考えてよいタイミングです。
ただし「3歳1日でアウト」というような厳密な線引きはありません。
「3歳前後で、逆さが圧倒的に多く、他のサインも気になる」というイメージで捉えてください。
逆さバイバイは自閉症のサイン?【関連性の正しい理解】

「逆さバイバイ=自閉症」と短く結論づけるのは正確ではありません。
一方で、自閉スペクトラム症(ASD)の特性のひとつとして語られることがあるのも事実です。
なぜ関連付けられるのか、整理しておきます。
ASDの特性のひとつに「他者の視点に立って考えることの難しさ」があります。
バイバイのときに「相手から自分の手はどう見えているか」を想像せず、自分から見えている向きをそのまま再現してしまう動きが、この特性と関連しているのではないか、と言われているんです。
実際、自閉症児における「役割交替模倣(自分がやることと相手がやることを切り替える模倣)」の発達遅滞を扱った研究では、逆向きバイバイが「自他の身体表象の混同を反映する可能性のある現象」として言及されています(参考:北海道大学リポジトリ「自閉症幼児における役割交替模倣と自他認識の発達」)。
ただし、これらはあくまで「研究レベルで検討されている可能性」であり、医学的に確立された因果関係ではありません。
「逆さバイバイをするから自閉症」という直接的な医学的根拠はない、ということは、ぜひ覚えておいてください。
ASDかどうかは、視線・呼名反応・指さし・言葉の発達・他者への関心・こだわり・感覚の特性など、多面的な観察と専門医の診察によって慎重に判断されるものです(発達障害ナビポータル|自閉スペクトラム症)。
バイバイの向き一点で決まるものではありません。
わが家の体験【2つのケースから見えてきたこと】

ここからは、わが家の体験と、妻のママ友のお話をご紹介します。
「問題なかったケース」と「結果的に診断につながったケース」を並べて見ることで、判断のイメージがつかみやすくなると思います。
ケース1:経過観察で問題なかった子(妻のママ友のお子さん)
妻のママ友の息子さんは、1歳半健診で逆さバイバイを保健師さんから指摘されました。
最初は「やっぱり何かあるのかも」と落ち込んだそうですが、よく観察してみると、
- 指さしはきちんとできる
- 名前を呼ぶと振り向く
- 単語もポツポツ出ている
- 目もしっかり合う
- パチパチや「いただきます」のまねもする
という状態だったため、「経過観察で大丈夫でしょう」と言われたそうです。
その後、2歳の誕生日を迎えるころには、自然と手のひらを相手に向けてバイバイができるようになっていました。
本人は意識して直したわけではなく、「気づいたらできていた」という感覚だったといいます。
3歳になった今は、保育園で元気に過ごしています。
このケースのように、逆さバイバイ以外の発達サインが年齢相応であれば、多くの場合は時間が解決してくれます。
ケース2:他のサインと重なり、診断につながった子(わが家の長女)
一方、わが家の長女の場合は、まったく違う経過をたどりました。
長女は0歳のうちは身体発達が順調で、3か月で首がすわり、4か月で寝返り、8か月でつかまり立ち、11か月でひとり歩きを始めました。
それだけ見れば「順調」だったんですが、1歳ごろから次の点が気になっていました。
- 名前を呼んでも振り向かない(呼名反応の弱さ)
- 指さしをしない/こちらの指さした方を見ない(指さし/指さし追従なし)
- 母親以外と視線が合いにくい
- 同年代の子どもにまったく関心を示さない
- 絵本の読み聞かせの場で座っていられない
- 離乳食の偏食が激しい
- バイバイ・パチパチなどの動作模倣そのものが乏しい
逆さバイバイは、こうしたサインの中のひとつとして現れました。
M-CHATで識別力が高いとされる6項目(要求の指さし、動作模倣、ふり遊び、指さし追従、言語理解、興味ある物を見せに持ってくる)のうち、ほぼすべてに気になる点があったんです。
保育園に入った1歳6か月の時点でも、発語はなく、逆さバイバイは続いていました。
1歳4か月で市の発達相談に電話をかけ、2歳から市の発達センターに通い始め、3歳1か月のときに、医師から「知的障害を伴う自閉症」と診断を受けました(その後、6歳の更新で「重度知的障害を伴う自閉症」に)。
ここで強くお伝えしたいのは、長女のケースで重要だったのは「逆さバイバイ」そのものではなく、それを含む複数のサインの重なりだったということです。
逆さバイバイ単独で診断が下されたわけではありません。
そして診断のとき、医師から言われた言葉が、わが家のその後の方針を決めました。
「今後の親や周囲の関わり方で、改善も悪化もする状態です」
この言葉を支えに、家庭・幼稚園・療育機関と連携しながら、毎週小さな目標を立てて積み重ねてきました。
長女は8歳の現在も発語こそありませんが、234ピースのジグソーパズルを自力で完成させ、ひらがなで自分の名前を書けるまでに成長しています。
詳しい経過は「早期療育のメリット」にもまとめています。
家庭でできる関わり方【逆さバイバイのなおし方3ステップ】

「いつかは直るかも」と待つのもひとつの選択ですが、せっかくなら家庭で楽しく関わって、自然な形で正しいバイバイを覚えてもらいたいですよね。
ここでは、わが家で重度の知的障害を伴う長女にも効果のあった、ごくシンプルな3ステップをご紹介します。
健常児のお子さんなら、もっと短い期間で身につくはずです。
特別な道具はいりません。
私が教材編集者として教材を7年間つくってきた経験から言うと、こうしたスキル獲得のコツは「正しいやり方を見せる→できた瞬間に強化する→難しければ補助でガイドする」という、シンプルな3段階に集約できます。
逆さバイバイも例外ではありません。
ステップ1:正しいお手本を「子どもと同じ向き」で見せる
逆さバイバイをしているとき、つい正面から「こうだよ」とお手本を見せてしまいがちです。
でも、対面で見せると、子どもにとっては左右や向きが反転して見えてしまい、かえって混乱の原因になります。
おすすめは、子どもの隣に並んで、同じ方向を向いてバイバイのお手本を見せることです。
鏡の前で並んで「バイバ〜イ」と一緒にやってみるのも効果的です。
ポイントは、
- 「ママはこうやるよ〜」と声をかけながらゆっくり振る
- 手のひらをしっかり外側(相手側)に向ける
- 「バイバ〜イ!」と明るく、楽しい雰囲気で
間違いを指摘するより、ポジティブな言葉で促してください。
「逆さまだよ!」と何度も言われると、バイバイ自体が嫌になってしまうことがあります。
ステップ2:偶然できた瞬間をすぐに褒める
ほんの一瞬でも、偶然でも、正しい向きでバイバイができた瞬間があれば、「いまの上手だったね!」「手のひら見えたよ!すごい!」と、見逃さずにすぐ褒めてください。
具体的に「手のひらがバイバイできたね」と何がよかったかを伝えると、子どもは「これが正しいんだ」と理解しやすくなります。
これは逆さバイバイに限らず、子どもの発達を促す関わり方の基本です。
応用行動分析(ABA)でも「望ましい行動が出た直後に強化する」ことが学習を加速すると示されており、療育の現場でも徹底されている考え方です。
「できないところを直す」より、「できた瞬間を強化する」ほうが、何倍も効率がよく、親子ともに楽しく取り組めます。
ステップ3:そっと手を添えて、向きをガイドする
声かけだけで難しいときは、子どもがバイバイをする瞬間に、そっと手首や腕に手を添えて、正しい向きに優しく誘導します。
ポイントは、
- 抵抗があるときは無理しない
- 言葉と動作を連動させる(「バイバイ」と言いながら)
- できたら必ず褒める
体の感覚を通じて「正しい動き」をインプットする方法です。
療育用語で「身体プロンプト」と呼ばれる手法で、本人にとって「自分でできた」という感覚を残すために、力で動かすのではなく、ガイドする程度の力加減で行ってください。
慣れてきたら徐々に補助を減らしていきます(プロンプトフェーディング)。

知的障害を伴う自閉症の長女の場合は、この3ステップを1年以上かけて、何百回・何千回と繰り返しました。
そのくらい長期戦でも、根気強く続ければちゃんとできるようになります。
健常児のお子さんなら、もっとずっと早く身につくはずなので、焦らず気長に取り組んでみてください。
無理に直そうとしないほうがよいケース

なおし方をご紹介したうえで矛盾するようですが、無理に直そうとしないほうがよいケースもあります。
- 親が指摘するたびに、子どもが嫌がって泣く
- バイバイ自体をしなくなってしまった
- 練習が「叱責」のような雰囲気になっている
- 親自身が追い詰められている
こうしたときは、いったん練習をお休みしてください。
逆さバイバイそのものは、子どもの生活に大きな支障があるわけではありません。
親子のコミュニケーションが楽しいことのほうが、何倍も大切です。
数か月空けてから再開してもよいですし、放っておいても自然に直っていくケースも多くあります。
どこに相談すればよい?【相談先と利用のコツ】

「相談したほうがよさそう」と感じたら、次の窓口を活用してください。
無料で相談できる場所がたくさんあります。
- かかりつけの小児科
最初に話しやすい相手です。健診時の発達面の相談にも乗ってくれます。
必要に応じて、専門機関を紹介してもらえます。 - 地域の保健センター・保健師
1歳半健診や3歳児健診を担当している保健師さんは、地域の発達相談の入り口です。
電話相談だけでも受け付けてくれる自治体が多いです。 - 子育て支援センター
気軽に行ける場所として、まず話を聞いてもらうのに向いています。 - 市町村の発達相談窓口・発達支援センター
発達検査や継続的な相談、療育につながる入り口です。
わが家の長女も、1歳4か月のときにここの定期面談につながりました。 - 児童発達支援事業所(民間の療育施設)
未就学児を対象にした療育の場です。
受給者証が必要になりますが、無料相談から受け付けている事業所も多いです。 - 発達障害者支援センター
都道府県・指定都市に設置されている公的相談窓口で、乳幼児から成人まで幅広く対応しています。
お住まいの地域の窓口は、発達障害ナビポータルから検索できます。
相談に行くときのコツは、
- 気になる行動をいつ・どんな状況で・どのくらいの頻度で出るかメモしておく
- 動画を撮っておくと話が早い
- 「健常児の範囲かどうか確認したい」とハッキリ伝える
- 一度の相談で結論が出なくても、定期的に通うと変化が見えやすい

「大げさかな」と思わず、気になったら早めに相談してください。
結果として「問題ありませんでした」となれば、それがいちばんの安心材料になります。
よくある質問(FAQ)

Q
逆さバイバイは、いつまで続いたら心配すべき?
A
ひとつの目安は3歳です。多くの子は2〜3歳までに自然に直ります。3歳を過ぎても主なバイバイが逆さで、かつ言葉・指さし・呼名反応など他のサインも気になる場合は、相談を検討してください。
Q
逆さバイバイと自閉症の関連性は、医学的に証明されているの?
A
「逆さバイバイをするから自閉症」という直接的な医学的根拠はありません。
1歳6か月児健診で広く使われているM-CHATでも、逆さバイバイ自体は項目に入っていません。
ASDの特性のひとつとして研究レベルで言及されることはありますが、あくまで多くのサインの中の「可能性のひとつ」です。
Q
1歳半健診で逆さバイバイを指摘されました。療育に通うべき?
A
指摘=療育確定、ではありません。他の発達サインの状況によります。
ただし、療育は健常児にとってもデメリットはなく、家庭での関わり方を学べる場でもあります。
気になるなら、早めに地域の発達相談に行ってみてください。療育の選び方はわが家がたどり着いた療育の選び方にまとめています。
Q
逆さバイバイを無理に直そうとすると、悪影響はありますか?
A
強く叱ったり、無理に手の向きを変えたりすると、バイバイそのものを嫌がるようになったり、親子のコミュニケーションに不安を感じることがあります。
「楽しく・優しく・根気強く」を心がけてください。
Q
兄弟で逆さバイバイをしていますが、遺伝ですか?
A
バイバイの向きそのものに遺伝的な根拠はありません。
兄弟で同じ動作が出るのは、上の子の動きをまねしている可能性や、家族が下の子に向けてバイバイをするときの位置関係など、環境的な要因のほうが大きいと考えられます。
Q
逆さバイバイのほかにも、自閉症の早期サインは何がありますか?
A
国の公的情報サイトである発達障害ナビポータルでは、ASDの乳幼児期の早期サインとして「目と目を合わせる、指さし、微笑み返し、後追い、模倣、人見知りといった社会的行動が弱い」「抱っこを好まない、偏食が激しい、こだわりが強い、始語が遅い」などが挙げられています(出典)。
わが家のケースは長女の自閉症に気づいたきっかけにまとめています。
家庭でできる発達サポートを探しているなら
「相談に行くほどではないけど、家でできることを増やしたい」という方には、家庭で取り組める療育プログラムも選択肢になります。
わが家でも10ヶ所以上の療育施設を見学・利用してきましたが、家庭学習型・教室型それぞれにメリットがあります。
参考までに、わが家でも利用してきた・調べてきた療育サービスのレビューを次の記事にまとめています。
まとめ|逆さバイバイは「全体像」で見る
最後に、この記事の要点をまとめます。
- 逆さバイバイは、健常児にもよく見られる自然な発達の一過程
- 多くの場合、2〜3歳までに自然と正しいバイバイに変わる(松井ら, 2017では月齢14か月で全員がバイバイの動作模倣ができていた)
- 逆さバイバイ単体で発達障害と判断することはできない(M-CHATでも独立項目として採用されていない)
- 3歳以降も続く+他のサインも複数気になるときは相談を検討(とくに指さし・呼名反応・動作模倣・ふり遊び・指さし追従・言語理解の6項目に注目)
- 関わり方は「楽しく・優しく・根気強く」が基本
- 気になるなら早めに相談を。結果が「問題なし」でも、それが安心材料になる
逆さバイバイに気づいて検索した、いまのあなたの「気にかける気持ち」は、お子さんを大切に見守っている何よりの証拠です。
不安な気持ちを抱えたまま一人で抱え込まず、家族・かかりつけ医・保健師さん・発達相談窓口など、頼れるところに頼ってください。
早めに相談することは、たとえ健常児であっても、けっして無駄にはなりません。
この記事が、あなたの不安を少しでも和らげ、次の一歩を踏み出すきっかけになれば嬉しいです。
参考文献・参考サイト
- 松井学洋, 中井靖, 高田哲. 「微細運動と言語能力の発達からみた模倣動作『バイバイ』」小児保健研究 第76巻 第6号, 2017
- 神尾陽子ほか. M-CHATの大規模追跡研究(2014, 2015)
- 発達障害ナビポータル|自閉スペクトラム症(厚生労働省・文部科学省監修)
- 発達障害ナビポータル|M-CHATについて
- 河田将一「自閉症幼児における役割交替模倣と自他認識の発達」北海道大学リポジトリ


