服の前後を間違える発達障害の子に、目印より先に効いた「教える順番」

服の前後を間違える子に、目印だけでなく教える順番を工夫する方法を示したアイキャッチ
お子さんの成長に悩む親御さんへ

なぜ、うちの子は療育で伸びないのか?

「療育に通っているのに、なぜか伸びない……」 かつての私と同じような悩みをお持ちの親御さんへ。
約7年間の実践と、資格の知見から見えてきた、療育メソッドの前に整えるべき「たった一つの○○」の重要性について、以下の記事で無料公開しています。
この「○○」が、あなたの療育の「なぜ?」を解き明かすヒントになるはずです。

なぜ、うちの子は療育で伸びないのか?
ケンサク

ケンサク

知的障がい支援士

はじめまして、ケンサクといいます。
重度知的障害を伴う自閉症の娘を育てる父親です。
「元・教材編集者」のスキルと専門資格を活かし、家庭で無理なく実践できる療育ノウハウを発信しています。

【資格】
◎知的障がい支援士
◎子ども発達障がい支援アドバイザー

【経験・実績】
◎教材出版社で教材編集・制作(約7年)
◎情報の「スモールステップ化」が得意
◎児童発達支援事業の立ち上げに関与
◎10ヶ所以上の療育施設を比較・体験
◎SNS総フォロワー2,500人以上
◎妻の3人目の妊娠時に、家族としてNIPTを経験
◎二女・三女の出産時に民間臍帯血バンクを利用

療育・障害児育児を中心に、家族で経験した妊娠・出産、NIPT、臍帯血保管についても、当事者・利用者の立場からお伝えします。

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朝、着替えを終えた我が子のTシャツが、また後ろ前でした。

「反対だよ」
「タグはうしろだよ」

何度伝えても、次の日も同じ。
そんな毎日になっていませんか?

言い方を変えたり、一緒に確かめたり。
あなたはもう、十分に工夫してきたはずです。

それでも直らないのは、お子さんが「できない」からでも、あなたの教え方が悪いからでもありません。

発達障害の子が服の前後を間違える背景には、特性が関係していることが少なくありません。

そのうえで家庭の壁になるのは、服の情報が見えにくいことと、着替えの段差が高すぎること。

この2つなんです。

このブログ記事では、間違える理由を整理したうえで、目印の付け方、わが家で効果があった教える順番、そして間違えたときにどこまで直させるかの線引きを書きます。

私は、重度知的障害を伴う自閉症の娘を育てる父親です。

知的障がい支援士の資格を持ち、教材編集の仕事を約7年していた経験から、家庭では課題を細かく分ける練習を続けてきました。

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服の前後を間違えるのは発達障害の特性?【考えられる4つの理由】

子どもが服の前後を間違える背景にある4つの要因を表した図

結論を先に書きます。

服の前後の間違いが続く背景には、発達障害の特性が関係していることが多いとされています。

少なくとも、わがままや不注意ではありません。

作業療法士や特別支援教育の専門家の解説では、主に次のような要因が挙げられています。

  • ボディイメージ(自分の体の位置や動きをつかむ感覚)が弱く、服と体の関係がつかみにくい
  • 「前」「後ろ」という位置の概念そのものが、まだあいまい
  • 服の見た目に関心が薄く、前後が逆でも本人は気にならない
  • タグや縫い目の感触が苦手で、あえて裏返しや逆向きを選んでいる

*参考:不器用さはどこから?着替えや運動にも繋がる「ボディイメージ」とは(LITALICO発達ナビ・作業療法士監修)子ども理解の「そこ大事!」(光村図書出版・特別支援学校教諭執筆)

どれに当てはまるかは、お子さんによって違います。

私は医療の専門家ではないので、診断にかかわる判断は主治医や発達相談の窓口への相談を前提にしていただきたいですが、家庭でできることの方向性は、どの要因でもそれほど変わりません。

本人の努力を増やす前に、情報を見えやすくする。
そして、作業の段差を下げる。

次から、その話をしていきます。

服の前後が分かる目印の付け方。ただし目印だけでは直らない

着るときに見える位置へ服の目印を付け、着替えの工程も確認する様子

服の前後の対策を調べると、たいてい「目印をつけましょう」と出てきます。

正しいです。
わが家も目印には何度も助けられました。

まず、付け方の基本から押さえましょう。

目印は「着るとき、本人の目に入る場所」へ

大人はタグや襟ぐりの深さで前後を判断できます。

でも、お子さんに「タグを探して」と教えるのは、工程をひとつ増やすことでもあります。

それより、着る動作の中で自然に目に入る場所に、目印をひとつ。

上着なら、着るときに手で持つ側(後ろ身ごろの裾の内側など)にワッペンやスタンプで印をつけて、「印を持って着る」と動作ごと教える方法がよく紹介されています。

ズボンなら「ポケットが後ろ」のように、判断の基準を1つに絞るのがコツです。
基準が服ごとに変わると、覚える負担が増えてしまいます。

ここからは、わが家の場合です。

娘は、靴下の上下や前後、どこを持てばいいのかが分かりにくい状態でした。
そこで、つま先に目印をつけました。

幼稚園の制服では、冬服のボタンは、縫い糸を色分けして掛け違いを防ぎました。
夏服の硬いスナップは、色分けしたマジックテープに付け替えました。

やってみて気づいたのは、娘は「できない」のではなく、情報が見えにくいだけの場面がある、ということです。

目印で迷いが減ると、自分でやろうとする様子が出てきました。

それでも直らないのは、工程の多さが残っているから

でも、目印をつけたのに定着しない。
毎朝「反対だよ」と言い続けている。

そんなご家庭も多いはずです。

ここで責めるべきは、お子さんの理解力でも、あなたの根気でもありません。

目印が解決してくれるのは「前後の情報が見えにくい」という問題だけ。
着替えには、もうひとつの壁が残っています。

工程の多さです。

Tシャツを1枚着る動作を分けてみます。

服を手に取る。
前後を確かめる。
裾を持つ。
頭を通す。
片腕ずつ袖に通す。
裾を引き下ろす。

ざっと分けても、これだけあります。

しかも、その間ずっと姿勢を保たなければいけません。

体幹が弱いお子さんにとって、立ったままの着替えはそれ自体が大仕事です。

前後の確認は、この長い工程の最初の1つにすぎません。

途中のどこかで余裕が尽きれば、確認どころではなくなります。

結果だけを見ると「また前後を間違えた」に見えますが、つまずきはもっと手前にあるのかもしれません。

だからわが家は、目印とセットで、工程そのものを娘に合う高さまで下げました。

その具体的な順番が、次の章です。

服の前後より先に効いた、わが家の教える順番【実体験】

座る、壁で体を支える、支えなしで立つ順番で着替えを練習する様子

着替えの練習で、わが家が一番効果を感じたのは、姿勢の段階を分けることでした。

最初は、座って練習する。
次に、壁で体を支えながら立ってやる。
最後に、何も支えなしで立ったままやる。

立ったまま着替えると姿勢が崩れやすい娘にとって、いきなり最終形を求めるのは段差が高すぎました。

座ってしまえば、姿勢を保つ負担が消えて、手元の操作に集中できます。

最後の一工程だけ任せる

もうひとつの柱が、工程の任せ方です。

全部を本人にやらせるのではなく、途中まで親が手伝って、最後の一工程だけ本人に任せる。

ボタンなら、穴に半分通すところまで親がやって、引き抜くところだけ娘がやる。

慣れてきたら、任せる範囲を一工程ずつ手前に増やしていく。

「自分でやり遂げた」という形は、最後の工程を任せるだけでも作れます。

できたら、そこで終わり

そして、できたらそこで終わりにしました。

「もう1回やってみよう」と欲を出したくなります。
私も何度もそう思いました。

でも、追加すると失敗で終わる日が増えて、着替えそのものが嫌いになりかねません。

成功で終われば、次もやろうとしてくれます。

この積み重ねで、娘はスナップボタンを自分で留められるようになりました。

幼稚園の制服のスカートのホックやブラウスのボタンも、自力かわずかな介助でできるようになりました。

靴下の向きも、指摘されれば自分で直せるようになりました。

魔法ではありません。
目印と、段差下げと、成功で終わる。

その地道な繰り返しの結果です。

正直に書くと、上着の前後は、娘は今でも間違えることがあります。
そこはまだ介助が必要です。

それでも、手伝う量は年々減っています。

全部できるようにならなくても、生活は目に見えて楽になる。

8年やってきて、そう感じています。

服の前後を間違えて着ていたら、どこまで直させるか

余裕のある練習場面と忙しい朝で、服の前後への対応を変える判断例

前後が逆のまま着終えていたとき、直させるべきか。

私の答えは「その日の目的によって変えていい」です。

着替えの練習をすると決めている場面なら、目印を指さして気づかせて、自分で直すところまで付き合う。

でも、登園・登校前の慌ただしい朝や、外出先ならどうでしょう。

親がさっと直してしまって構いません。
むしろ、急かしながら直させて失敗体験にするくらいなら、その日は親が直したほうがいいと私は考えています。

すべての着替えを教育の機会にしなくていい。

練習は、余裕のある場面に絞って十分です。
直させられなかった朝に、罪悪感を持つ必要はありません。

目指す到達点も、いきなり「自分で気づいて直す」に置かなくて大丈夫です。

娘の場合も、まず「指摘されたら自分で直せる」が先でした。
それだけで、親の手間も本人の負担も大きく減ります。

着替えに限らず、目印や絵カードで情報を見えやすくする工夫は、生活のいろいろな場面に応用できます。

服の前後についてよくある質問

服の前後を間違える年齢、前後のない服、裏表の間違いについてのFAQ

Q

服の前後が分からないのは、何歳まで普通ですか?

A

発達に特性のない子でも、幼児期のうちは前後の間違いはよくあります。何歳までなら普通、と一律には言えません。

年齢だけで判断するより、着替え以外にも困りごとが重なっていないかを目安にしてください。気になる場合は、自治体の発達相談などで聞いてみると安心です。

Q

前後のない服(前後2wayの服)に頼るのは、甘やかしですか?

A

甘やかしではありません。

本人が変わるのを待つのではなく、環境の側を変える。療育で「環境調整」と呼ばれる、正攻法のひとつです。

間違えようのない服で朝の負担を減らしつつ、練習は余裕のある場面で別に積む。分けて考えていいと思います。

Q

裏表もよく間違えます

A

考え方は前後と同じで、裏表が分かる目印や、脱ぐときに袖を戻す習慣づけが入口になります。

ひとつ気をつけたいのは、毎回のように裏返しを選ぶ場合です。タグや縫い目の感触が嫌で、あえて裏返している可能性があります。その場合は直させるより、タグを切る、縫い目の目立たない服を選ぶ、といった対応が先です。

まとめ|目印は入口、教える順番が本体

服の前後の間違いには、ボディイメージや前後の概念、関心の薄さといった特性が関係していることが多く、目印や服選びが有効。ここまでは、多くの解説に書かれているとおりです。

そのうえで、この記事で伝えたかったことはひとつ。

目印をつけても直らないなら、次に見直すのは教える順番です。

座ってから、立って。
最後の一工程から、少しずつ手前へ。
できたら、そこで終わり。

お子さんが「できない」のではなく、今の段差が高すぎるだけかもしれません。

まずは今日、靴下のつま先に目印をひとつ。
そこから始めてみてください。

なお、わが家がこの8年でやってきた家庭療育の全体像は、観察のしかたから課題の分け方まで、1冊のnoteにまとめています。

特別な教材は使っていません。
知的障害を伴う自閉症の娘と、一工程ずつ進んできた記録です。

着替え以外の場面にも同じ考え方を使いたい方は、のぞいてみてください。

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