「40歳で3人目なんて、やめたほうがいいのかな」
「もし後悔したら、どうしよう」
そんなふうに迷われてはいないでしょうか。
3人目を迷うことは、無責任なことではありません。
むしろ逆です。
体力のこと、お金のこと、そして口には出しにくい「もしも」のこと。
そこまで真剣に考えているから、決められないんです。
私は、重度知的障害を伴う自閉症の長女を育てる父親です。
妻は40代で3人目を妊娠し、出産しました。
だから、障害のある子との暮らしがどんなものかも、そのうえで3人目を迎えた家庭がどうなるかも、身をもって知っています。
このブログ記事では、よく言われる後悔の理由を整理したうえで、他ではあまり語られない「障害のある子の親になったら、本当に後悔するのか」という問いに、当事者として答えます。
読み終わる頃には、あなたが何に引っかかって決められないのかが、見えているはずです。
※本記事は、筆者の家族の体験および情報収集に基づいた記録であり、医学的な助言や診断を目的としたものではありません。
※妊娠・出産・出生前診断に関するご判断は、必ず産婦人科医など専門の医療機関にご相談ください。
目次
40歳で3人目を「後悔した」と言われる3つの理由

世間で言われている「後悔の理由」を、まず整理しておきます。
掲示板やYahoo!知恵袋、医療機関の解説記事を調べた範囲では、大きく3つに集約されます。
- 体力の不安
- お金の不安
- 障害、妊娠リスクの不安
順番に見ていきます。
体力の不安
新生児期の夜間授乳を、40代の体でもう一度やることになります。
しかも今回は、上の2人の送迎や行事、宿題などと並行しながらです。
「20代の頃と同じ育児はできなかった」という声は、経験者の口コミでも目立っていました。
お金の不安
3人目が大学を卒業する頃、自分たちは何歳か。
40歳で出産した場合、単純計算で60代前半です。
教育費のピークと、老後資金の準備期間が正面からぶつかります。
ここが「2人までなら何とかなるが、3人はためらう」と言われる大きな理由です。
障害・妊娠リスクの不安
ここからは一般的な医学情報です。
母体の年齢が上がるにつれて、染色体疾患のあるお子さんが生まれる確率が上がることが知られています。
厚生労働省の検討会資料などで示されている年齢別の目安では、ダウン症候群(21トリソミー)の発生頻度は、20代でおよそ1,000人に1人程度、35歳でおよそ300〜400人に1人、40歳でおよそ100人に1人とされています(数値は資料により幅があります)。
*出典:厚生労働省「不妊に悩む方への特定治療支援事業等のあり方に関する検討会」報告書
また、妊娠高血圧症候群や流産率の上昇など、母体側のリスクが高まることも指摘されています。
35歳以上の初産は高齢出産(高年初産)とされ、経産婦については、国際的に40歳以上を高齢出産として扱う基準があります。
*出典:日本産婦人科医会「高年初産について」
このあたりの詳しい数字は、以下の記事で整理しています。
さて、3つ並べました。
あなたが一番引っかかっているのは、どれでしょうか。
体力とお金は、大変ではあっても「計算できる不安」です。
家計と年齢を並べれば、ある程度は見通しが立ちます。
でも、3つ目だけは違うはずです。
本当に怖いのは「障害があったら」ではないでしょうか?

「もし障害のある子だったら、私は後悔してしまうんじゃないか」
この不安は、口には出しにくいものです。
ママ友にも、実の親にも、下手をすると夫婦の間でさえ、言いづらい。
口に出した瞬間、「そんなことを考えるなんて」と思われる気もするでしょう。
その気持ちは、よく分かります。
わが家の長女は、0歳の頃から他の子への関心が薄く、どこか違和感がありました。
それでも「少し発達が遅いだけかもしれない」と、しばらくは思いたかったんです。
3歳1ヶ月のとき、医師から「知的障害を伴う自閉症」と診断されました。
帰り道、私たち夫婦は言葉を交わせませんでした。
だから、あなたのその不安を「考えすぎ」とは言いません。
考えて当然のことです。
ただ、1つだけ言えることがあります。
確率の数字をいくら眺めても、この不安は消えません。
あなたが本当に知りたいのは「100人に1人」という数字ではなく、「もしそうなったとき、その後の生活と気持ちがどうなるか」だからです。
そこで次の章では、実際に障害のある子の親になった私が、後悔しているのかどうかを書きます。
なお、「障害児が生まれたらどうしよう」という不安そのものへの向き合い方は、以下の記事でも詳しく書いています。
障害のある子の親になって後悔しているか【父親としての正直な答え】

先に答えを書きます。
私たち夫婦は、障害のある長女を授かったことを後悔していません。
ただし、きれいごとだけで語るつもりもありません。
これは、あくまでわが家の場合の話として読んでください。
想像していた「障害児のいる生活」と実際の違い
診断を受けた当時、私が想像していた未来は、真っ暗でした。
「一生笑えないんじゃないか」
「家族で出かけることも、もうないんじゃないか」
そんなことばかり考えていました。
実際はどうだったか。
大変さは、本物でした。
言葉の指示がほとんど通らない。
1秒も椅子に座っていられない。
外出すれば逃走の心配が絶えない。
正直に書くと、親子ともに限界に近づいた時期もありました。
親を追い詰めるのは子どもではなく、「合っていないやり方」を続けてしまう状況なのだと、後になって分かりましたが、当時はそんな余裕もなかったんです。
でも、想像と大きく違ったこともあります。
真っ暗だと思っていた生活の中に、普通の楽しさが、普通にありました。
娘が好きなアンパンマンのアニメを見て笑う。
休日に手をつないで散歩する。
食卓で、好物を前に目を輝かせる。
診断名がついても、娘は娘のままでした。
そこは、診断前の想像が一番外れていた部分です。
大変さは消えない。でも変化はある
もう1つ、当時の私に教えてあげたいことがあります。
障害は治りません。
でも、生活は変わっていきます。
1秒も座れなかった長女は、今では机の上の課題に向かえる場面が出てきました。
トイレに一人で行ける場面が増え、自分の名前をひらがなで書けるようになりました。
家族で外食や旅行を楽しめる日も出てきています。
課題を細かく分けて、観察して、また分けて。
そういう地道なスモールステップを何年も積み重ねた結果です。
今も介助が必要なことは多く、大変さが消えたわけではありません。
それでも、はっきり言えることがあります。
「大変」と「後悔」は、別物なんです。
毎日は大変です。
それでも、この子を授かってよかったと思う気持ちは変わらない。
この2つは、矛盾せずに同居します。
障害のある長女がいるわが家が、妹たちを迎えてどうなったか

「障害のある子がいるのに、下の子を持って大丈夫だったのか」
3人目を迷うあなたには、ここが一番気になるかもしれません。
わが家は長女のあとに二女、三女を迎えているので、その実際を書きます。
まず、簡単ではありませんでした。
赤ちゃんの泣き声は、聴覚過敏のある長女にとって強い負荷。
当初は戸惑って耳を塞ぐことが多く、家庭内の音、睡眠、生活リズムは大きく変わりました。
親の側も、手が足りない場面が増えました。
ただ、時間をかけて、変化も生まれたんです。
長女は少しずつ、泣いている妹の横で怒らずに過ごせるようになり、そっと手を握るような場面も出てきました。
妹たちも長女に関心を持ち、おもちゃを貸したり、取り合いになりながらも譲ったり。
何気ない日常の中に、姉妹としての関わりが育っています。
一方で、意識して続けている工夫もあります。
長女が放課後等デイサービスなどで不在の時間は、妹たちが親を独り占めできる時間として大切にしています。
きょうだい児が「お姉ちゃんばっかり」と感じるのは、わがままではなく自然な感情です。
そこを我慢させて美談にしないことは、夫婦で決めていることの1つです。
大変さと工夫を全部ひっくるめたうえで、妹たちを迎えた選択を、私たちは後悔していません。
わが家が40代・3人目の妊娠でNIPTを受けた理由と、受けて分かったこと

妻の3人目の妊娠が分かったとき、私たち夫婦が最初に悩んだのは、出生前診断を受けるかどうかです。
障害のある子と暮らす日常を知っているからこそ、軽い気持ちでは決められませんでした。
悩む中で、私たちは不安を2つに分けました。
「調べられる不安」と「調べられない不安」です。
NIPT(新型出生前診断)は、母体の血液から染色体疾患の可能性を調べる検査です。
日本医学会の出生前検査認証制度等運営委員会によると、認証施設で対象になっているのはダウン症候群(21トリソミー)、18トリソミー、13トリソミーの3つで、性別や他の疾患は原則として調べません(認証外の施設では、対象を広げた検査プランを設けているところもあります)。
*出典:出生前検査認証制度等運営委員会「NIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)とは」
ここで、大事なことを1つ。
長女のような自閉症や知的障害は、NIPTでは分かりません。
これは誤解している方が多い部分です。
どれだけ検査をしても、「調べられない不安」は残ります。
それでもわが家は、受けると決めました。
調べられるものを調べずに妊娠期を過ごしたら、不安に飲まれてしまう気がしたからです。
いくつかの施設を比較して、最終的に平石こどもクリニックの提携院で受検しました。
結果は、採血から約1週間でメールで届きました。
受けてみて分かったのは、検査で「安心」が買えるわけではない、ということです。
買えたのは、「調べられることは調べた」という納得でした。
その納得が、結果を待つ間も、その後の妊娠期間も、私たち夫婦の気持ちを支えてくれました。
受ける・受けないに、正解はありません。
検査を受けないと決めることも、1つの立派な判断です。
わが家が受けると決めるまでの葛藤は、以下の記事に詳しく書いています。
実際に受けた際の詳しい流れや口コミは、以下の記事にまとめています。
40歳で3人目。後悔しやすい決め方・後悔しにくい決め方

ここまでを踏まえて、判断の話をします。
同じ悩みを持つ方の声を読み、自分たち自身も決断してきて、感じていることがあります。
後悔は、「40歳だから」生まれるのではありません。
不安を曖昧なままにして決めたときに、生まれやすくなります。
後悔しやすいのは「不安を曖昧なままにした決断」
産む・産まない、どちらを選んでも同じです。
「なんとかなるでしょ」と勢いで決めて、想定していなかった負担に直面する。
「もう歳だから」と周囲の声だけで諦めて、何年も「あのとき」を引きずる。
どちらも、不安の中身を見ないまま決めたことが原因です。
年齢そのものは、後悔の原因ではありません。
40代で産んで幸せな家庭も、2人で良かったと心から思う家庭も、両方あります。
決める前に確認したい3つのこと
だから、決める前に、頭の中だけで悩まず、いったん言葉にしてみることをおすすめします。
スマホのメモでも、夫婦のLINEでも十分です。
- 体力:毎晩の授乳を誰とどう分担するか。上の子の送迎は回るか。具体的な1日を想像する
- お金:末っ子が大人になる頃、自分たちは何歳か。年齢と教育費を並べてみる
- 障害の不安:「調べられる不安」と「調べられない不安」に分ける
3つ目について補足します。
染色体疾患のように、NIPTなどの検査で確認する選択肢があるものは「調べられる不安」です。
一方、自閉症のように生まれる前には分からないものは「調べられない不安」です。
調べられない側については、この記事の前半で書いたわが家の実際が、1つの判断材料になればと思います。
「大変」と「後悔」は別物であること。
障害のある子がいる家庭にも、普通の楽しさがあること。
そのうえで、「自分たち夫婦は、どちらの結果でも受け止めて暮らしていけるか」を話し合ってみてください。
「産まずに後悔」とどう向き合うか
逆側の後悔の話もしておきます。
同じように悩んだ方の声を読んでいると、気づくことがあります。
「産まなきゃよかった」という声と同じくらい、「あのとき産んでおけばよかった」という声もあることに。
どちらを選んでも、選ばなかった人生は残ります。
だから、わが家が大事だと思うのは、「決めた理由」を夫婦で言葉にして残しておくことです。
「私たちは、こういう理由で、こう決めた」
これが言えるうちは、選ばなかった人生と比較し続けずに済みます。
迷いが後悔に変わるのは、理由を思い出せなくなったときだからです。
「調べられる不安」を片づけるという選択肢
そのうえで、「調べられる不安」だけでも先に片づけたいと思ったら、NIPT(出生前診断)という選択肢があります。
検討する前に、知っておいてほしいことが3つあります。
1つ目は、費用です。
NIPTは自由診療のため健康保険が使えません。
日本医学会 出生前検査認証制度等運営委員会によると、認証施設での基本的な検査(3疾患)の費用はおおむね10万円弱から20万円とされています。
*出典:出生前検査認証制度等運営委員会「NIPTとは」
認証外の施設で対象を広げたプランを選ぶ場合は、金額がさらに上がることもあります(金額は施設・時期により変わるため、最新は各施設の公式サイトでご確認ください)。
2つ目は、週数です。
同委員会によれば、NIPTは妊娠9〜10週以降に受けられる検査です。
迷っている時間にも、検査を受けられる期間には限りがあります。
3つ目は、1人で決めなくていいということです。
多くの施設で、予約前に無料の電話相談や遺伝カウンセリングを利用できます。
わが家も、疑問は採血前に電話で解消しました。
受ける・受けない、どちらを選んでも間違いではありません。
わが家が「受けるかどうか」自体で悩んだ経緯は、以下の記事に詳しく書いています。
施設ごとの違いを比較したい場合は、以下の記事もあわせてご覧ください。
よくある質問

Q
37歳・38歳の3人目や、2人目の場合でも考え方は同じですか?
A
基本的な考え方は同じです。
染色体疾患の確率は年齢とともに段階的に上がるため、40歳との間に医学的な「崖」があるわけではありません。
2人目か3人目かで変わるのは主に体力・お金・上の子との関係の部分で、不安を分けて考えるという判断の手順は変わりません。
年齢別の詳しいリスクは医療機関の情報でご確認ください。
Q
40歳以上で3人目を産む人は、実際どのくらいいますか?
A
厚生労働省の人口動態統計をもとにした分析では、経産婦が40歳以降に第2子・第3子を出産するケースは出生数全体の一定割合を占めており、増加傾向にあるとされています。
決して珍しい選択ではありません。
最新の正確な数値は厚生労働省の人口動態統計でご確認ください。
Q
NIPTはいつまでに受ける必要がありますか?
A
日本医学会 出生前検査認証制度等運営委員会によると、NIPTは妊娠9〜10週以降に受けられる検査です(*出典:出生前検査認証制度等運営委員会「NIPTとは」)。
受検できる週数に上限を設けている施設もあるため、検討する場合は妊娠が分かった段階で情報収集を始めるのが安心です。
最新の受付週数は各施設の公式サイトでご確認ください。
Q
夫婦で意見が割れています。どうすればいいですか?
A
わが家の経験から言えるのは、「賛成・反対」で議論せず、お互いの不安の中身を言葉にして見せ合うほうが前に進む、ということです。
反対の裏には、体力・お金・障害のどれかへの不安が隠れていることがほとんどです。
そのうえで、かかりつけの産婦人科医など第三者に相談するのも1つの方法です。
Q
すでに3人目を出産していて、「産まなきゃよかった」と思ってしまう瞬間があります。
A
その気持ちが浮かぶこと自体を、責めないでほしいです。
多くの場合それは、お子さんへの愛情の問題ではなく、睡眠不足や負担が限界に近づいているサインです。
わが家も、長女の育児で親子ともに限界に近づいた時期がありました。
家族のほか、自治体の子育て相談窓口やかかりつけ医など、頼れる先に早めに声をかけてください。
1人で抱え込むほど、疲れは「後悔」の形に固まりやすくなります。
まとめ:後悔は「40歳だから」ではなく「決め方」から生まれる
40歳で3人目を考えるとき、体力、お金、障害や妊娠のリスク。
どの不安も、事実として存在します。
そこはごまかせません。
でも、重度知的障害のある長女と暮らし、40代で3人目を迎えたわが家の実感として、これだけは伝えたい。
「大変」と「後悔」は別物です。
そして後悔は、年齢からではなく、不安を曖昧なままにした決め方から生まれます。
まずは、あなたの不安を3つに分けて、言葉にしてみてください。
調べられるものは、調べる。
調べられないものは、夫婦で受け止め方を話し合う。
それができたなら、産む選択も、産まない選択も、あなたたち夫婦の答えです。
今夜の迷いを、明日の話し合いの最初の一歩にしてみてください。
参考文献(本文中の該当箇所にもリンクを設置しています)
- 厚生労働省「不妊に悩む方への特定治療支援事業等のあり方に関する検討会」報告書 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000022024.html
- 日本産婦人科医会「高年初産について教えてください。」 https://www.jaog.or.jp/qa/confinement/jyosei180124/
- 出生前検査認証制度等運営委員会(日本医学会)「NIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)とは」
https://jams-prenatal.jp/testing/nipt/ - 厚生労働省「人口動態調査 結果の概要」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html
※いずれも執筆時点で内容を確認済みの公式ページです。最新情報は各リンク先でご確認ください。
