「もう無理かもしれない……」
「この子を、自分たちで育てていけるんだろうか……」
障害のある我が子を育てながら、そんなふうに思われた日は、ないでしょうか。
その言葉が出てくる状況には、幅があります。今日がしんどいだけの日もあれば、この生活があと10年続くと思うと息が詰まる日もある。誰かが本当に危ない日も、あります。
同じ「育てられない」でも、当たる先は違います。
このブログ記事では、まず自分がどの段階にいるかを見分けたうえで、段階ごとに使える支援を整理します。施設入所は、そこまで必要な方だけが読めばいい形で後半に置きました。
私は重度知的障害を伴う自閉症の娘を育てる父親です。いくつかの資格は持っていますが、医療や療育の専門職ではありません。制度の部分は公的な資料をもとに、わが家の話とは分けて書いています。
- 「育てられない」と感じる状態を、3つの段階に分けて見分ける方法
- 段階ごとに当たれる支援と、その頼み先
- 障害児入所施設で実際に決まること(措置と契約、18歳の区切り、費用のしくみ)
※本記事は、筆者の家族の体験および情報収集に基づいた記録であり、医学的な助言や診断を目的としたものではありません。
※制度の名称・対象・費用・手続きは自治体によって異なります。利用の可否については、お住まいの自治体の障害福祉窓口や相談支援専門員にご確認ください
目次
「育てられない」と思う日には、段階があります【まず、どこにいるかを見分ける】

最初にやることは、支援を探すことではありません。いま自分がどの段階にいるかを、いったん言葉にすることです。
大きく3つに分かれます。
- 段階①|今日がしんどい:睡眠が削れている。休みがない。今週を越えられる気がしない
- 段階②|この先ずっとだと思うと無理:今日は何とかなる。ただ、この生活が何年も続く前提が持てない
- 段階③|このままだと誰かが危ない:子どもが自分や誰かを傷つける。親のほうが手を上げそうになる。離れないと壊れる
①なら、いま使っている支援の使い方を変えるところから始まります。
②なら、使える支援そのものを足す段階です。
③は、すぐに連絡すべき先があります。
施設入所の話は、段階③の後にまとめました。いま①や②にいる方は、その章を読まなくて大丈夫です。むしろ、読まないほうがいい、と思っています。
日によって段階が動くとき
昨日は①、今日は③。そういう揺れ方をすることもあるでしょう。そのときは、いちばん重かった日を基準にしてください。落ち着いた日の自分で判断すると、必要な支援に手が届かないまま時間が過ぎます。
3つのどれにも当てはまらない、という方もいるかもしれません。はっきりした事件が起きているわけではない。人に説明できるほどの困りごとでもない。ただ、毎日が少しずつ削れていく。
無理に分類しなくて大丈夫です。心当たりのある支援に、1つでも当たってみてください。
まだお子さんが生まれていない段階でこの不安を抱えている方は、以下の記事のほうが近い内容です。
わが家が「自分たちは育てていけるのか」と思った日のこと

長女が1歳台の頃の話です。
発達不安を最初に口にしたのは、妻でした。二人で話し合って発達相談の窓口に電話をかけると決めた後も、常に心配していたのは妻で、その当時の私はやや楽観視していたと思います。
「育てていけるのか」と本当に思ったのは、その先でした。長女の診断を聞いた日、3歳1か月のときです。
医師からは、今後の親や周囲の関わり方で改善も悪化もする状態だと説明を受けました。その言葉は正しかったと今は思います。ただ、あの日の私たち夫婦には、責任の重さとしてしか聞こえませんでした。
生活のほうは、診断の前からすでに限界に近づきつつあったと思います。
長女が2歳の頃、切り替えの場面で毎回泣き叫んでいました。逃走癖もあり、外に出るときは片時も気を抜けませんでした。年長の頃には妹が生まれ、家の中の音も睡眠のリズムも、一度に変わりました。
誰かが悪いわけではない。それでも、家が回らない。
あなたが冷たい親だから、離れたいと思うのではありません。ひとりの大人が24時間支え続けるには、単純に量が多すぎるだけです。
家の中の負荷を減らす順番については、以下の記事で整理しています。
【段階①|今日がしんどい】いま使っている支援を、「休むため」に使い直す

すでに児童発達支援や放課後等デイサービスに通っているなら、新しい制度を探す前に、いま使っているものの使い方を変えるほうが早いです。
変えられるのは、日数と曜日です。
わが家では、土日に通っている支援の時間を、親が休むための時間としても使っています。子どもの発達のためだけに使っているわけではありません。
これを書くのに、少し迷いました。療育は子どものためのものです。親が楽をするために使うのは違うのではないか。私も、最初はそう思っていました。
ただ、制度のほうを見ると、家族の休息は目的の外に置かれていません。次の章で挙げる日中一時支援は、家族の一時的な休息を目的の1つとして書いています。国の検討の場でも、保護者のレスパイトの観点は繰り返し挙げられてきました。
*出典:家族支援の方策(厚生労働省・障害児支援の見直しに関する検討会 資料)
わが家の場合、土日に離れる時間があることで、平日の関わり方が変わりました。余裕がない日の私は、長女の様子をよく見ないまま動いてしまうんです。休みが挟まると、そこが少しだけ戻ります。
休んだから何かが大きく変わった、という話ではありません。ただ、親の側が続けられるかどうかは、支援が続くかどうかと同じ意味を持ちます。
預ける理由を、子どものためだと言い直さなくて大丈夫です。
まだ何の支援も使っていない場合
診断がまだ出ていない、受給者証を持っていない。その状態でこの記事にたどり着く方もいると思います。
入口は、自治体の障害福祉窓口か子育て支援の窓口です。診断名がなくても相談はできますし、手帳がなくても利用できる支援があります。受給者証そのものの話は、以下の記事で扱っています。
【段階②|この先ずっとだと思うと無理】使える支援を足す、4つの選択肢

この先を続けられるようにする段階です。ここで足せる支援が4つあります。
日中一時支援
日中、見守りが必要な子どもを一時的に預かる市町村の事業です。厚生労働省の資料では、この事業の目的として、家族の就労支援とあわせて「日常的に介護している家族の一時的な休息」が挙げられています。
*出典:家族支援の方策(厚生労働省・障害児支援の見直しに関する検討会 資料)
市町村ごとの事業なので、名称も対象も1回あたりの時間も、地域によってまちまちです。「うちの市にあるか」から確認することになります。
短期入所(ショートステイ)
泊まりで預かってもらう支援です。厚生労働省はこのサービスを、自宅で介護する人が病気の場合などに、短期間、夜間も含めて施設等で入浴や排せつ、食事の介護等を行うもの、と説明しています。
*出典:サービスの体系(厚生労働省)
「病気のときだけ」と読めますが、実際の運用では、介護している人の休息を理由に使われている例もあります。使えるかどうかは自治体の判断になるため、窓口で直接聞いてください。なお、この出典ページは法改正前の記述を含みます。
居宅介護・行動援護
預けに行くのではなく、家に人が来る支援と、外出に人がついてくれる支援です。
居宅介護は、自宅での入浴、排せつ、食事の介護等を行うもの。行動援護は、自己判断能力が制限されている人が行動するときに、危険を回避するために必要な支援や外出支援を行うものとされています(出典は前項と同じ)。
飛び出しがある子の外出にこの支援が使えると、親の緊張がだいぶ違ってきます。ただし行動援護には、対象になるかどうかの判定があります。
相談支援専門員をつける
4つ目に書きましたが、正直なところ、いちばん最初に置くべきかもしれません。
どの支援がどれくらい使えるかを、一緒に組み立ててくれる人です。ここまでの3つを親がひとりで探すのか、一緒に探してくれる人がいるのかで、たどり着く速さがまるで変わります。ついていない場合は、自治体の障害福祉窓口に「相談支援を利用したい」と伝えるところから始まります。
わが家が、まだ使っていない理由
正直に書きます。わが家は日中一時支援も短期入所も、まだ使っていません。今は放課後等デイサービスと療育で回っていて、必要な段階に来ていないからです。
ただ、いつかは使うと思っています。理由は2つです。
1つは、妹たちの行事。学校や園の予定は、こちらの都合で動きません。長女を連れて行けない場面は、これから増えます。
もう1つは、そのときが来てから申し込んだのでは間に合わないことです。
支援は、必要になった日には使えません。手続きにも、事業所を見学して決めるのにも、子どもがその場所に慣れるのにも時間がかかります。初めての場所でいきなり一晩過ごせる子は、多くありません。
だから、必要になってから探すのではなく、余裕があるうちに慣らしておく。先輩の親御さんに勧められたのも、この順番でした。
【段階③|このままだと誰かが危ない】一緒にいると危ないと感じているとき

危ないと感じているなら、今日、以下の番号にかけてください。
児童相談所虐待対応ダイヤルは「189」です。子育てに悩んだときの相談先としても案内されています。あわせて、児童相談所相談専用ダイヤル「0120-189-783」があります。
*出典:オレンジリボン・児童虐待防止推進キャンペーン(189 いちはやく)
「虐待」という言葉が入っているせいで、かけるのをためらう方が多いと思います。でも、実際は子育てに悩んだときの相談先でもあるんです。
かける前に、3つだけメモしておくと話が早く進みます。いつから続いているか。何が起きているか。いま家に他に誰がいるか。
親の不調が2週間以上続いているとき
眠れない、涙が止まらない、何も感じなくなる。そういう状態が続いているなら、それも相談する理由になります。
親自身のサインの見分け方と、公的な相談窓口の一覧は、以下の記事にまとめています。
障害児入所施設という選択肢【段階③で検討される方へ】

ここから先は、実際に離れて暮らすことを考えている方に向けた内容です。段階①や②にいる方は、読まずに次のよくある質問へ進んでください。
先に、私の立場を書いておきます。わが家は入所を経験していません。この章は体験談ではなく、公的な資料を読んで整理したものです。
そのうえで、いちばん誤解されやすい点から書きます。障害児入所施設は、希望すれば入れる施設ではありません。
対象と、決める人
福祉型は知的障害児(自閉症を含む)、盲ろうあ児、肢体不自由のある児童が対象。医療型は自閉症児、肢体不自由のある児童、重症心身障害児が対象とされています。
そのうえで対象者は、施設への入所を適当と児童相談所が認めた者と定められています。親が決めるのではなく、児童相談所の判断が入ります。
*出典:入所施設支援(国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター)
措置入所と契約入所
児童相談所などが必要と判断する措置入所と、家庭の側が施設と契約して入る契約入所があります。
厚生労働省の資料によると、措置での入所理由は虐待(疑いあり)と保護者の養育力不足が多く、契約ではその他に次いで保護者の養育力不足が多くなっています。そしてこの資料には、留意が1つ添えられています。保護者の養育力不足には「障害の状態により家庭での養育が困難という場合も含まれていると考えられる」、と。
*出典:障害児入所施設の現状(厚生労働省)
つまり、あなたが今感じている「育てられない」と同じ理由で入所している子どもは、現にいます。特別なことではありません。
手に負えないと感じている行動が、強い場合
自傷や他害が激しい、いわゆる強度行動障害の状態にあるお子さんの場合、受け入れ先を見つけること自体が難しくなります。
国の検討会でも、障害児入所施設の課題として「強度行動障害児への対応力の強化」が挙げられ、児から者へ移る段階で移行先がない、という意見が出ています。
*出典:障害児入所施設(福祉型)の課題整理(厚生労働省)
断られることがあったとしても、お子さんや家庭の側に問題があるからではありません。受け皿の数が足りていない、という別の問題です。この場合は、相談支援専門員と児童相談所の両方に状況を渡し、探す範囲を広げていくことになります。
数と、18歳という区切り
指定事業所数は福祉型が260、医療型が268とされています(平成31年3月時点の速報値。数値は資料により幅があります)。全国でこの数です。地域によっては、近くにないことも、空きがないこともあります。
18歳未満を対象とした施設ですが、18歳以上で引き続き入所している人も一定数おり、同じ資料では1,500人と記録されています。
すでにお子さんが18歳を超えている場合は、児童福祉法ではなく障害者総合支援法の枠になります。都道府県が指定する障害者入所施設で、夜間の入浴・排せつ・食事等の介護や、生活に関する相談・助言を受ける形です。入口は、市町村の障害福祉窓口か相談支援事業者です。
*出典:入所施設支援(国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター)
18歳以降の進路や住まいについては、以下の記事で整理しています。
入所は「もう会えなくなる」ことではありません
ここは、公的な資料がはっきり書いています。
障害児入所施設運営指針には、家庭復帰がなされないことは、親子関係や家族関係の希薄化・断絶を意味するものではないと記されています。すぐの家庭復帰が難しい場合でも、入所を続ける中で親子関係の再構築や家族再統合のあり方を検討し続けることが重要である、という趣旨です。
さらに、社会資源がないために家庭復帰がなされないこともある、という一文も添えられています。
*出典:障害児入所施設運営指針(厚生労働省)
実際、契約入所では外泊・帰省なしが15%です。裏を返せば、契約で入所している家庭の多くは帰省や外泊の行き来がある形になります(措置では51%と、傾向が分かれます)。
手放すことと、離れて暮らすことは、同じではありません。
なお、ここで挙げた数値は執筆時点で確認できた公表資料に基づくものです。制度も費用の考え方も改正されるため、実際の検討にあたっては自治体の障害福祉窓口でご確認ください。
よくある質問

Q
支援を使ったり施設に預けたりするのは、育児放棄になりますか?
A
なりません。支援制度を使うことと、必要な養育をしないことは別です。入所施設の運営指針でも、入所は家庭復帰や親子関係の再構築を検討し続ける前提とされています。迷う場合は自治体の障害福祉窓口か児童相談所に相談してください。
Q
まだ限界というほどではないのに、支援を申し込んでもいいのでしょうか?
A
構いません。むしろ、限界の手前で登録しておくほうが現実的です。手続きにも、子どもが慣れるのにも時間がかかるため、必要になった日から使い始めることはできません。
Q
入所や短期入所の費用は、どれくらいかかりますか?
A
所得に応じた負担上限月額が設定され、それに食費や光熱水費の実費が加わります。入所では、この実費に対する軽減のしくみ(補足給付)も用意されています。金額は世帯の所得区分で変わるため、具体的な額は自治体の障害福祉窓口でご確認ください。
*出典:障害福祉サービス・障害児通所支援等の利用者負担認定の手引き(厚生労働省・こども家庭庁)
Q
入所したら、そのまま大人になるまで暮らすことになりますか?
A
そうとは限りません。18歳未満を対象とした施設であり、在籍年数も家庭との行き来も家庭ごとに違います。18歳以降の住まいは、入所を検討する段階で一緒に相談することになります。
Q
ネットで見かける「親権を放棄すれば預けられる」は本当ですか?
A
そこで語られている内容は、投稿者の理解であって制度の説明ではありません。障害児入所施設の入所は、児童相談所が適当と認めることが前提であり、親権の有無で決まる仕組みではありません。正確な手続きは、児童相談所か自治体の窓口で確認してください。
まとめ:同じ「育てられない」でも、当たる先は違います
「育てられないと感じるのは自然なこと。一人で抱え込まないでください」
そう書かれたネットの記事はたくさんあります。間違ってはいません。ただ、抱え込まないための道順がないと、読んだ後に動けません。
今日がしんどいなら、いま使っている支援を休むために使い直す。この先が続かないなら、支援を足す。危ないなら、今日189にかける。
そして支援は、必要になった日には使えません。今日できることを1つ挙げるなら、相談支援専門員がついているかどうかを確認することです。ついていないなら、自治体の障害福祉窓口に「相談支援を利用したい」と伝えるところから始まります。
支援を足す前に、家の中の負荷そのものを減らす順番については、以下のnoteにまとめました。何を見て、何を減らし、どう記録するか。この記事に書ききれなかった部分です。
参考文献
- 入所施設支援(国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター)
- 障害児入所施設の現状(厚生労働省)
- 障害児入所施設運営指針(厚生労働省)
- 障害児入所施設(福祉型)の課題整理(厚生労働省)
- サービスの体系(厚生労働省)
- 家族支援の方策(厚生労働省・障害児支援の見直しに関する検討会 資料)
- 障害福祉サービス・障害児通所支援等の利用者負担認定の手引き(厚生労働省・こども家庭庁)
- オレンジリボン・児童虐待防止推進キャンペーン(189 いちはやく)
- 全国児童相談所一覧(こども家庭庁)
※いずれも執筆時点(2026年8月)で内容を確認済みの公式ページです。制度の内容は改正されることがあるため、実際の手続きはお住まいの自治体の窓口でご確認ください。
※このブログ記事では、公的機関が公表している情報と、わが家の体験を分けて書いています。編集方針については編集方針・情報の取り扱いについてをご覧ください。

